あの夏に見たあの町で



私が行く視察と言ったら、担当エリアの西欧




何回かは行ったことがあるが、毎回大きなスーツケースを持って1週間くらいかけて西欧のホテルを見て回る




今日の今日でいきなり行くぞってことはとてもじゃないけどやりたくない





やってきたエレベーターに乗り込み駐車場がある地下のボタンを押したのは背の高い男性



恐らく専務の秘書だと思われる





「国内だ」




エレベーターの壁に背中を預け専務が言う




国内なら尚更私の担当外なんですけどぉ!?





「あのっ、国内は私の担当ではありませんし、まだ今日の業務も終わっていませんので―――――」



鞄を返してくださいと言うはずだった言葉は専務によって遮られた




「今日は新館予定地の視察で、お前こそが相応しい。あと、フランスからのメールはさっき返したし、金井にも伝達済みだからお前の今日必須の業務はもうない。」





フランス語もできるだと?



嫌味か?




専務の視察同行を回避するための理由を潰され口を閉ざさざるを得なかった





渋々専務に続いて地下駐車場に到着したエレベーターを降りる





「ちっもうきてやがる」と専務が呟き、「急げ」と急かされる