替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする

マリウスさんの決断は正解だった。
その後も追っ手に遭遇することなく、私達は迂回しながら、ついにガザン王の剣のある山の近くに辿り着いた。
確かに緊張はあったけど、この道程もこれといって問題もないまま無事に過ごせた。



マリウスさんとの仲に進展がないのはちょっと残念だけど…
それは仕方ないかな。



「……いよいよだな。」

「あぁ……」



山を見上げるマリウスさんは、今、どんなことを考えているのだろう?



「じゃあ、行こうか!」

私達は、山に向かって歩き始めた。



「多分、あそこが問題の森だな。」

「だろうな。
でも、私達には護符がある。
心配はいらないだろう。」



フェルナンさんはそう言うけれど…
私はやっぱり心配。
もしも、その護符がちゃんと機能しなかったら、どうなってしまうんだろう?



「なんだ、サキ…心配なのか?」

マリウスさんに心の中を読まれてしまった。



「は、はい、ちょっとだけ心配です。」

私がそう言うと、マリウスさんはにっこりと微笑む。



「大丈夫だから…」

そう言いながら、マリウスさんは私の肩をぽんと叩いた。
ただそれだけのことなのに、私の心にぱっと花が咲いた。