「お久しぶりです。フェルナン様。」

「ヒルダさん!」



ヒルダの突然の訪問に、私は面食らった。
なぜ、ここのことがわかったのか?
貴族だと偽っていたことがバレたのか?と、気まずい想いを感じた。



「シャルア様にお聞きして参りました。
それにしても、こんな所で庶民の暮らしをなさるとは…
ずいぶんと酔狂な…」

「た、確かにそうですね。
私は変わり者ですから。」

サキがうまく言ってくれたのだと思った。



「それで、今日はどのようなご用件で?」

「実は……あなたにお伺いしたいことがあります。
単刀直入に伺いますが…あなた様は、ペンダントをお持ちではありませんか?
ヴァリアンの紋章の入ったものです…」

「な、なぜそれを……」

「では、持ってらっしゃるのですね!?」

「……はい。」

私は首にかけたペンダントを引っ張り上げて、ヒルダに見せた。



「これは…!」

ヒルダは、ペンダントを食い入るようにみつめた。



「教えて下さい。
これは何なんです?
このペンダントに一体何が?」

「それは申せませんが…決して悪いようには致しません。
あなたは本来いるべきところへ行くことになるでしょう。」

「ヒルダさん、それは一体どういうことなんです?」



しかし、ヒルダは教えてはくれなかった。
何も言わず、そのまま家を後にした。