大体、なんで見舞いに来ているんだろう。

 行ったって目覚めるわけじゃない。

 目覚めた時に傍にいたって、なんの意味もない。

 寝ている人間は、そこですべての時間を止めてしまうんだから。

 茉莉花はこいつの力の入らない手を握り、さも幸せそうに微笑む。

 それがあたし達を心配させない為のパフォーマンス。

 幸せなはずない。

 苦痛だった、あの空間全てが。

 息苦しいあの空間の異様な圧迫感。

 起きてくれることを信じて祈り、願い、焦がれることこそが美しいものだと見せつけられている様な錯覚。

 だって、無理だ。

 あたしはは絶対茉莉花にはなれない。