そんな俺に菖蒲(あやめ)は縋ってくれる。

 透明な純粋な涙が、俺の心を引き裂いているとも知らずに。

 「…なんでこいつだけがこんな目に…」

 やめてくれ。

 「…俺のせいだ…」

 胸が締め付けられる思いで、菖蒲の涙に答える。

 「大丈夫だ、次もきっとすぐ目覚める」

 希望など、俺にはない。

 信じてなどいない。

 菖蒲を苦しめるあの子の存在に俺は嫉妬し、

 息子の病気に苦しむ親友の涙を見たくないと言う理由だけで祈る。

 誰の為でもない、俺の為に。