結局、ヤマトにおんぶに抱っこでパーティの準備を任せ。
 あたしはあたしで婚姻届け出に必要なものを市役所に取りに行ったり、合い間に引っ越しの荷造りやら。それとは別モノで由弦の相手もして、師走って以上に師走な日々だった。

 会社には入籍することだけ報告した。忘年会で社長と会社からお祝いをもらい、相手を訊かれて『幼馴染のサラリーマン』と答えておいた。
 プロポーズは中二の時だって話したら純愛だって羨ましがられたから、由弦に教えたら。そんじょそこらの男と一緒くたにするな感がハンパなく、鼻で一笑された。・・・なんかムカついた。
 




 
 慌ただしく動き回ってる内に12月25日になっちゃった。・・・ていうのが、いちばん正直な感想で。

 引っ越しもどうにか済んで、先週末から洋秋と同じマンションの205号室に由弦と暮らし始めてる。
 洗濯機だの電化製品や日用品は由弦が使ってたのをそのまま。買い直したのはダブルベッドだけ。
 ・・・・・・もうね。とにかく由弦が浮かれてるってゆーか。
 手慣れてないあたしの料理を嬉しそうに食べ、洗い物しててもどこにいてもベッタリくっついて。瑠衣、瑠衣って、片時も離れない。
 若頭の威厳、ちゃんと保ててるんでしょーね、あんた。逆に心配になるぐらい。洋秋に訊いたら今のトコ仕事に支障は出てないらしい。
  
 午前中、洋秋達と4人で市役所に婚姻届けを出しに行き、正式に受理された。
 水上鈴奈になった彼女と、真下瑠衣子になったあたし。
 なかなか涙が収まらない鈴奈さんを、洋秋が人目もはばからず抱き締めてた。重ねた月日が永かった分、人知れず積もって溢れる想いも二人にはあっただろう。 
 
「お前は泣かねぇのな」 

 手を恋人繋ぎして、駐車場に停めた車に戻る途中。歩きながら由弦が不満そうな目付きであたしを見下ろしてる。

 由弦にとっては、待ち焦がれた瞬間。
 あたしは。なんて言うか。
 ・・・・・・やっとしっくり落ち着いた。ってそんなカンジ。
 ずっと由弦の気持ちを受け止めきれずに、中途半端なままだったから。
 これからなんだよ。
 由弦とどんな時間を紡いでいこうって。胸を膨らませて。
 だからね。ドレス着てあんたの隣りに立った時、ものすごく実感するんだと思う。
 
「後にとっといてんの!」 

 人が悪そうに笑って、あたしは鼻を鳴らしてみせた。