タイムマシンはいらない。




岸本はルックスもいいし、女慣れしてると思ってたのに、掴まれた手は力加減の知らない握り方。

そんなにまっすぐ見つめられると、自分がひどく汚く見える。私は深いため息をついて、再びソファーに腰を下ろした。


「岸本って、何歳だっけ」

「23です」

……若っ。どうりでキラキラしてるわけだ。


5つも年下なんて、もはや自分とは別の生き物のように思えてくる。

いいなあ。これからいっぱい明るい未来があるじゃん。

私はどうだろう。来月誕生日がきて29。

20代最後の年をひとりで過ごすのかな。ああ、本当に私の三年間を返せ。


「ねえ、ビールない?」

なんだかまた飲みたくなっちゃった。


「ダメですよ。マジで飲み過ぎですから」

「いいじゃん。一杯だけ。そしたら大人しく泊まってあげるからさ」

岸本の優しさを素直に受け取れない私は、わざと茶化すような言い方をした。


「はあ……。分かりました。本当に一杯だけですよ」

岸本は冷蔵庫からビールを持ってきた。しかも2本。自分も飲むつもりらしい。「乾杯」と、軽く缶を押し当てて、冷えているビールを喉に流し込んだ。