「本当にごめん」
後輩に迷惑かけるなんて、私はなにをしてるんだろう。
「謝らなくていいですよ。実咲さんが路上で倒れなくて本当によかった」
岸本はカッコいいとうよりは可愛い系。
仕事の出来は平均的だけど、出世コースにいけるほどの技量はない。それでも上司や同僚には好かれていて、私と同期の女子たちもよく岸本の話をしてる。
どうやら笑顔が癒されるらしい。
たしかに岸本は雰囲気が柔らかい。でも私はそれがみんなに媚びているように感じて、岸本に対して甘い考えを持ったことは一度もない。
だから、私は岸本にとって怖い先輩だと思う。
なのに、目の前で吐いて、部屋に運ばれてしまうなんて……。
明日からどうやって会社に行こう。もしかして言いふらされて笑い者にされるんじゃないだろうか。
「私、帰るから」
これ以上ここにいたら、またなにか失敗してしまいそうだ。
「終電ないですよ。しかもここら辺の道はタクシーも捕まらないですし」
壁の時計を見ると、いつの間にか日付が変わっている。
「泊まっていってください。俺はソファーで寝るんで」
「いや、帰るよ。歩いてればタクシーの1台くらいあるかもしれないし」
岸本の家に泊まる?そんなの絶対にありえないし、先輩の威厳を保つためにも岸本に甘えるわけにはいかない。
「危ないんで、帰らないでください」
立ち上がろうとした身体をひき止めるように、岸本は私の手を掴んだ。



