友達の紹介で知り合って、お互いに一目惚れだった。


よく雷に打たれたようにビビビッとくる、なんて言うけれど、まさにそんな感じ。

一目見て、会話をして、連絡先を交換する頃には、私はきっとこの人とずっと一緒にいることになるんだろうなと思ったくらい波長が合う人だった。


それから付き合いがはじまって、仕事場からの距離や生活サイクルを考えて同棲はせずに、週末だけ私が彼の家に泊まりにいくことが当たり前になっていた。


色ちがいの部屋着。おそろいの歯ブラシ。

ベッドはシングルだったけれど、彼にくっついて眠ると狭さなんてひとつも感じなくて、幸せとは、こういうことを言うんだって、二十代半ばにして実感していた。


『別れてほしい』

そう告げられたのは、いつものように彼の家で週末を過ごしている時だった。


最初は冗談だと思ったけれど、エイプリルフールってわけでもないし。どんなに激しい喧嘩をしても別れようなんて言わなかった彼が、目を逸らしたくなるほど真剣な顔をしていた。


他に好きな人がいると言われて、妊娠三か月だと言われた時には、正直、呆れて涙も出なかった。


相手の人がどんな人で、どこで知り合って、いつからそういう関係だったのか。私は一切なにも聞かなかった。

ううん、聞けなかったのだ。

これ以上、惨めになりたくなかった。