「岸本ってさ、彼女いる?」
テレビがついていない部屋はとても静かで。無言で飲んだらまた悪酔いしそうだったから、私から話を振った。
「いません」
「最後にいたのいつ?」
「大学一年の時ですかね」
「え、じゃあ、三年くらいいないの?」
「はい」
……すっごく意外。見た目が草食系の人ほど中身が肉食だったりするから、けっこう遊んでると思ってた。
「岸本なら選び放題なのに、もったいない。今の内に遊んでおいたほうがいいよ。年齢重ねると、したくてもできなくなるし」
私はそう言って、ビールをぐいっと飲む。
「実咲さんは彼氏いますか?」
この流れでは当然される質問。私は悲しみなんて一切見せずにニコリと笑った。
「いないよ。色々と合わなくて私から振っちゃった」
ああ、邪魔なプライド。
でも、必要なプライド。
そうだ、私が振ったことにすればいい。
全部、全部なかったことにして、私が清々しく捨ててやったと思えばいい。
そう、記憶を書き換えられたらいいのに。
今日、飲んだお酒の種類も覚えてないのに、あの人との思い出はひとつも消えない。
きっと私がダメだった。
もっと弱音を言えばよかった。
頼りたい時に頼ればよかった。
強がりなんて、やめればよかった。
寂しいと、素直に認めればよかった。
「……実咲さん?」
気づくと私は泣いていた。ぽろぽろと岸本の前なのに涙が止めどなく流れてくる。



