｢わ。｣

ほんの1歩、足の長さだけ進んでいた航くんが急に立ち止まって私を見る。

｢どしたん？田中君？｣

｢あのさ、俺もこの曲の人と同じ気持ちやねんよ。｣

｢うん、それさっき聞いたで。｣

｢ちょっ！最後まで聞いてw｣

｢あ、ごめん、どうぞ。｣

｢好きな人に番号聞けへんし今日こそって思っても話せたから昨日より進歩したなって満足するし。｣

｢うん。｣

｢でも、この曲きいてちょっと勇気出てきた。ありがとうな！武藤！｣

あ、これ、航君の恋の後押しをしてしまったんだろうか。

｢そっか、それは良かった…ね。｣

ちょっとショックかな。いや、ちょっとじゃないな。
もういいか。話せただけで満足。

と、航君はもう一度ちゃんと私の顔を見て。














｢なぁ、番号おしえて？
武藤と学校なくてもやりとりしたい。｣