お通夜の様な暗い雰囲気に、姿を現したジャスティーヌは何事かと全員の顔を見比べた。
「ジャスティーヌ、お前に大切な話がある」
ルドルフが口を開くと、ジャスティーヌがコクリと頷いた。
「とにかく、大至急、アレクサンドラをアレクシスからアレクサンドラに戻してもらいたい」
父の言葉にジャスティーヌは首を傾げると、アレクサンドラの事を見つめた。
「ジャスティーヌ、アレクシスは田舎に帰ることにしたんだ」
「アレク・・・・・・」
「国王陛下から、アレクサンドラを正式に社交界にデビューさせるようにとお話があった」
ルドルフは、ジャスティーヌの将来にも関わる結婚や見合いの話を伏せたまま、事の重要性がジャスティーヌに伝わるように言葉を選んだ。
「わかりました、お父様」
国王陛下からの命令とあれば、もはや一人二役を二人が同時に行うの不可能だ。アレクサンドラがアレクシスであることを止め、アレクサンドラに戻り、ジャスティーヌはジャスティーヌとして、アレクサンドラの身代わりを止めるほかなかった。
「ジャスティーヌ、僕、じゃなかった、私、頑張るから」
アレクサンドラの言葉に頷くと、ジャスティーヌは心細げなアレクサンドラの手を取った。
「お父様、早速、ライラにアレクのドレスアップをさせるようにしますね」
ジャスティーヌは言うと、父の言葉を待たずにアレクサンドラを連れて部屋を出た。
階段を上り、私室に入ると、自分のドレッシングクローゼットの扉を全開にしてから、呼び鈴の紐を引いてライラを呼んだ。
ジャスティーヌが掻い摘まんで説明すると、ライラはすぐにアレクサンドラの着替えを始めた。
男物の薄いブラウスも体の線を隠さないトラウザーもレディには相応しくなかったが、アレクサンドラにはとても良く似合っていた。
身につけていると言うよりも、体の曲線を隠している様な今の下着ではドレスを着ることはできないので、ライラはコルセットを取り出すとアレクサンドラの体に巻き付けていった。
「んぐ! □×△×××・・・・・・!」
ライラがコルセットの紐を締め始めると、一気にアレクサンドラの顔色が悪くなった。
「ちょ、ちょっとまって、ライラ!」
慌ててジャスティーヌが声をかけると、ライラが手を止めた。
「まだ、ジャスティーヌ様の半分も絞めておりませんよ」
しれっと答えるライラを制し、ジャスティーヌがアレクサンドラの顔を覗き込んだ。
「アレク、大丈夫?」
「だ、大丈夫。まだ、生きてるから」
今にも気絶しそうという感じで応えるアレクに、ライラは『締めます』と、一声かけると再びぎゅっとコルセットを引き締めた。
「ちょっと、待った!」
アレクサンドラが叫ぶのと、ライラの手が止まるのは、ほとんど同時だった。
「これで、ジャスティーヌ様の半分でございます」
「これで、半分なの・・・・・・」
「このサイズであれば、ずいぶん前にアレクサンドラ様の為にと、奥様がお作りになられた普段用のドレスが着られるかと存じます」
ライラは言うと、アレクサンドラのクローゼットの奥から、大人しいブルーの花柄のドレスを取り出した。
「お揃いなのね」
「はい、さようでございます」
ライラは答えながら、息も絶え絶えなアレクサンドラにシングルのパニエを付けさせ、ドレスをかぶせて着せた。
ドレスを着たアレクサンドラは、当然の事ながら、どこからみても女の子だったが、髪型だけレディではなかった。
「後は髪の毛だけね」
「残念ですが、コルセットをもっと締めなくては、他に着られるドレスがございません」
ジャスティーヌの助け船はライラに一蹴されてしまった。
「アレク、明日からは立ち居振る舞いと言葉遣いの特訓よ!」
「分かってるよ、ジャスティーヌ」
アレクサンドラは力なく答えた。
ライラは慣れた手つきでアレクサンドラにメイクを施すと、短い髪を手早くまとめた。
正式な場所に出かけるのでない限り、独身のレディには髪の毛を下ろしたままにする自由があるので、ジャスティーヌは日頃は髪の毛を下ろしたスタイルにしているが、それは髪の毛が長いからできることで、短いアレクサンドラの場合は、常日頃から結い上げる必要があることはライラも理解していたので、長年万が一の時の為に考案していた形にアレクサンドラの髪を結い上げていった。
「今日のところは、このような形でよろしいでしょうか?」
考えてきたとはいえ、実際に試したことがないのだから、幾らライラが最高のメイドとはいえ、最初から何もかも上手くいくというわけにはいかない。しかし、出来上がったアレクサンドラは、ジャスティーヌでさえ想像していなかったくらい美しいレディだった。
「すごいわ、ライラ。これなら、お父様も私と間違われるかもしれないわ」
ジャスティーヌは感激して言うと、アレクサンドラの手を取った。
「さっそく、お父様たちを驚かしに行きましょう」
「いや、ジャスティーヌみたいには僕は行かないよ」
「アレク。もう、ちゃんと鏡を見て。あなたはどこから見ても立派なレディなんだから」
ジャスティーヌの言葉に、アレクサンドラはまじまじと鏡に映る自分の姿を見つめた。
姿形だけなら、確かにジャスティーヌとは瓜二つだし、鏡に映っているのは自分と言うよりも、ジャスティーヌが変わった髪形をしてるくらいにしか感じられない。しかし、これからずっとこの姿が自分の姿になるのだと思うと、やはり気持ちとしてはトラウザーズを穿いてサーベルを腰に下げてジャスティーヌを護る騎士のようにふるまっている方が自分らしく感じた。それと同時に、これなら、あのアントニウスから突き付けられている無茶苦茶な『自分を篭絡してみせろ』という関門をクリアーできるのではないかと言う気もした。
「えっと、わかったわ、ジャスティーヌ。今日これからは、私はアレクサンドラ。ジャスティーヌの妹にもどるから、色々教えてね」
アレクサンドラは緊張しながら一言一言を選びながらレディらしく振舞った。
「さあ、行きましょうアレク!」
嬉しそうにジャスティーヌは言うと、アレクサンドラの手を引いて部屋を後にした。
「ジャスティーヌ、お前に大切な話がある」
ルドルフが口を開くと、ジャスティーヌがコクリと頷いた。
「とにかく、大至急、アレクサンドラをアレクシスからアレクサンドラに戻してもらいたい」
父の言葉にジャスティーヌは首を傾げると、アレクサンドラの事を見つめた。
「ジャスティーヌ、アレクシスは田舎に帰ることにしたんだ」
「アレク・・・・・・」
「国王陛下から、アレクサンドラを正式に社交界にデビューさせるようにとお話があった」
ルドルフは、ジャスティーヌの将来にも関わる結婚や見合いの話を伏せたまま、事の重要性がジャスティーヌに伝わるように言葉を選んだ。
「わかりました、お父様」
国王陛下からの命令とあれば、もはや一人二役を二人が同時に行うの不可能だ。アレクサンドラがアレクシスであることを止め、アレクサンドラに戻り、ジャスティーヌはジャスティーヌとして、アレクサンドラの身代わりを止めるほかなかった。
「ジャスティーヌ、僕、じゃなかった、私、頑張るから」
アレクサンドラの言葉に頷くと、ジャスティーヌは心細げなアレクサンドラの手を取った。
「お父様、早速、ライラにアレクのドレスアップをさせるようにしますね」
ジャスティーヌは言うと、父の言葉を待たずにアレクサンドラを連れて部屋を出た。
階段を上り、私室に入ると、自分のドレッシングクローゼットの扉を全開にしてから、呼び鈴の紐を引いてライラを呼んだ。
ジャスティーヌが掻い摘まんで説明すると、ライラはすぐにアレクサンドラの着替えを始めた。
男物の薄いブラウスも体の線を隠さないトラウザーもレディには相応しくなかったが、アレクサンドラにはとても良く似合っていた。
身につけていると言うよりも、体の曲線を隠している様な今の下着ではドレスを着ることはできないので、ライラはコルセットを取り出すとアレクサンドラの体に巻き付けていった。
「んぐ! □×△×××・・・・・・!」
ライラがコルセットの紐を締め始めると、一気にアレクサンドラの顔色が悪くなった。
「ちょ、ちょっとまって、ライラ!」
慌ててジャスティーヌが声をかけると、ライラが手を止めた。
「まだ、ジャスティーヌ様の半分も絞めておりませんよ」
しれっと答えるライラを制し、ジャスティーヌがアレクサンドラの顔を覗き込んだ。
「アレク、大丈夫?」
「だ、大丈夫。まだ、生きてるから」
今にも気絶しそうという感じで応えるアレクに、ライラは『締めます』と、一声かけると再びぎゅっとコルセットを引き締めた。
「ちょっと、待った!」
アレクサンドラが叫ぶのと、ライラの手が止まるのは、ほとんど同時だった。
「これで、ジャスティーヌ様の半分でございます」
「これで、半分なの・・・・・・」
「このサイズであれば、ずいぶん前にアレクサンドラ様の為にと、奥様がお作りになられた普段用のドレスが着られるかと存じます」
ライラは言うと、アレクサンドラのクローゼットの奥から、大人しいブルーの花柄のドレスを取り出した。
「お揃いなのね」
「はい、さようでございます」
ライラは答えながら、息も絶え絶えなアレクサンドラにシングルのパニエを付けさせ、ドレスをかぶせて着せた。
ドレスを着たアレクサンドラは、当然の事ながら、どこからみても女の子だったが、髪型だけレディではなかった。
「後は髪の毛だけね」
「残念ですが、コルセットをもっと締めなくては、他に着られるドレスがございません」
ジャスティーヌの助け船はライラに一蹴されてしまった。
「アレク、明日からは立ち居振る舞いと言葉遣いの特訓よ!」
「分かってるよ、ジャスティーヌ」
アレクサンドラは力なく答えた。
ライラは慣れた手つきでアレクサンドラにメイクを施すと、短い髪を手早くまとめた。
正式な場所に出かけるのでない限り、独身のレディには髪の毛を下ろしたままにする自由があるので、ジャスティーヌは日頃は髪の毛を下ろしたスタイルにしているが、それは髪の毛が長いからできることで、短いアレクサンドラの場合は、常日頃から結い上げる必要があることはライラも理解していたので、長年万が一の時の為に考案していた形にアレクサンドラの髪を結い上げていった。
「今日のところは、このような形でよろしいでしょうか?」
考えてきたとはいえ、実際に試したことがないのだから、幾らライラが最高のメイドとはいえ、最初から何もかも上手くいくというわけにはいかない。しかし、出来上がったアレクサンドラは、ジャスティーヌでさえ想像していなかったくらい美しいレディだった。
「すごいわ、ライラ。これなら、お父様も私と間違われるかもしれないわ」
ジャスティーヌは感激して言うと、アレクサンドラの手を取った。
「さっそく、お父様たちを驚かしに行きましょう」
「いや、ジャスティーヌみたいには僕は行かないよ」
「アレク。もう、ちゃんと鏡を見て。あなたはどこから見ても立派なレディなんだから」
ジャスティーヌの言葉に、アレクサンドラはまじまじと鏡に映る自分の姿を見つめた。
姿形だけなら、確かにジャスティーヌとは瓜二つだし、鏡に映っているのは自分と言うよりも、ジャスティーヌが変わった髪形をしてるくらいにしか感じられない。しかし、これからずっとこの姿が自分の姿になるのだと思うと、やはり気持ちとしてはトラウザーズを穿いてサーベルを腰に下げてジャスティーヌを護る騎士のようにふるまっている方が自分らしく感じた。それと同時に、これなら、あのアントニウスから突き付けられている無茶苦茶な『自分を篭絡してみせろ』という関門をクリアーできるのではないかと言う気もした。
「えっと、わかったわ、ジャスティーヌ。今日これからは、私はアレクサンドラ。ジャスティーヌの妹にもどるから、色々教えてね」
アレクサンドラは緊張しながら一言一言を選びながらレディらしく振舞った。
「さあ、行きましょうアレク!」
嬉しそうにジャスティーヌは言うと、アレクサンドラの手を引いて部屋を後にした。



