「気を失っていらしたとはいえ、衣服を乱した失礼、ここにお詫びさせていただきます。どうかレディ、あなたのお名前をお教えください。あなたがレディだと分かった以上、あなたをアレクシスと呼ぶわけには参りません」
丁寧な謝罪と申し入れに、アレクサンドラは仕方なく口を開いた。
「私の名前は、アレクサンドラ・ビクトリア。ジャスティーヌの妹です」
いつもとは違い、丁寧な発音で、レディらしく名乗ると、なんとなく気持ちもレディのような気がしてくるから不思議だ。
「つまり、あなたが本当の殿下の見合い相手?」
「そうです。今日の相手は、本当は私です」
「では、なぜ男装をしてお供役を?」
「私は、この見合いには気が進まず、姉に代わりを頼んだので、アレクシスに代わって姉の様子を見に・・・・・・」
嘘を重ねてみたものの、髪の毛が短い事と、出かけに交わした会話から、自分がかつてからの知り合いであるアレクシスであることを知っているアントニウスを騙せるはずはなかった。
「つまり、私が殿下に早駆けの許可を戴きに背を向けている間に、アレクシスと入れ替わったと?」
「・・・・・・」
さすがにそこまで言われると、返す言葉がなかった。
「あなたは、どんな理由があるかは分からないが、アレクシスであり、アレクサンドラ嬢でもある。そうですね?」
筋道を立てて言われると、大した理由もなく男の姿をしていた自分が愚かに感じられた。
「そうです。わかったら、後ろを向いてください。身なりを整えますから」
精一杯、女らしく言うと、アントニオはすぐに背を向けてくれた。
アレクサンドラはシルクのシャツブラウスのボタンを確認し、ベストと上着のボタンをしっかりと留め、身なりを整えた。
「もう大丈夫です」
アレクサンドラの言葉に、アントニウスが振り向いた。
「このことは、私の胸のうちに留めておきます」
アントニウスの言葉に、驚いてアレクサンドラがアントニウスを見つめた。
「その代わり、アレクシスとしてもう一度、私と二人だけでお話しする時間を戴きたい」
アントニウスが何を考えているのか分からず、アレクサンドラは困惑したが、しぶしぶ頷いた。
「では、明日、もう一度遠乗りに」
「それから、私に秘密が知れたことは、ジャスティーヌ嬢にもご内密に。あくまでも、これは私とあなただけの秘密という事です」
アントニウスに言われなくても、心配性のジャスティーヌに話すつもりはなかったし、既に見合い話のせいで疲労困憊している父にもアレクサンドラは話すつもりはなかった。
「では、そろそろ参りましょう。殿下が探しにいらっしゃるかもしれない」
差し出されたアントニウスの手を取って立ち上がると、二人は馬の手綱を手に歩き出した。
☆☆☆
丁寧な謝罪と申し入れに、アレクサンドラは仕方なく口を開いた。
「私の名前は、アレクサンドラ・ビクトリア。ジャスティーヌの妹です」
いつもとは違い、丁寧な発音で、レディらしく名乗ると、なんとなく気持ちもレディのような気がしてくるから不思議だ。
「つまり、あなたが本当の殿下の見合い相手?」
「そうです。今日の相手は、本当は私です」
「では、なぜ男装をしてお供役を?」
「私は、この見合いには気が進まず、姉に代わりを頼んだので、アレクシスに代わって姉の様子を見に・・・・・・」
嘘を重ねてみたものの、髪の毛が短い事と、出かけに交わした会話から、自分がかつてからの知り合いであるアレクシスであることを知っているアントニウスを騙せるはずはなかった。
「つまり、私が殿下に早駆けの許可を戴きに背を向けている間に、アレクシスと入れ替わったと?」
「・・・・・・」
さすがにそこまで言われると、返す言葉がなかった。
「あなたは、どんな理由があるかは分からないが、アレクシスであり、アレクサンドラ嬢でもある。そうですね?」
筋道を立てて言われると、大した理由もなく男の姿をしていた自分が愚かに感じられた。
「そうです。わかったら、後ろを向いてください。身なりを整えますから」
精一杯、女らしく言うと、アントニオはすぐに背を向けてくれた。
アレクサンドラはシルクのシャツブラウスのボタンを確認し、ベストと上着のボタンをしっかりと留め、身なりを整えた。
「もう大丈夫です」
アレクサンドラの言葉に、アントニウスが振り向いた。
「このことは、私の胸のうちに留めておきます」
アントニウスの言葉に、驚いてアレクサンドラがアントニウスを見つめた。
「その代わり、アレクシスとしてもう一度、私と二人だけでお話しする時間を戴きたい」
アントニウスが何を考えているのか分からず、アレクサンドラは困惑したが、しぶしぶ頷いた。
「では、明日、もう一度遠乗りに」
「それから、私に秘密が知れたことは、ジャスティーヌ嬢にもご内密に。あくまでも、これは私とあなただけの秘密という事です」
アントニウスに言われなくても、心配性のジャスティーヌに話すつもりはなかったし、既に見合い話のせいで疲労困憊している父にもアレクサンドラは話すつもりはなかった。
「では、そろそろ参りましょう。殿下が探しにいらっしゃるかもしれない」
差し出されたアントニウスの手を取って立ち上がると、二人は馬の手綱を手に歩き出した。
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