王宮への帰路につきながら、ロベルトは頭を抱えていた。
 目を閉じれば、鬼の首を取ったように伯爵の前で自分の非道を訴えるアレクシスの姿が浮かび、その隣で泣き崩れるアレクサンドラの肩をしっかりと抱き留め、怒りを瞳に宿すジャスティーヌの姿までがリアルに浮かんでくる。自分で招いたこととは言え、非常にマズい事態だ。
 どんなにロベルトが弁解したとしても、見てきたことのようにアレクシスが非道を解説し、アレクサンドラが泣き続けて否定も何もしなかったら、ジャスティーヌはロベルトに対して王子としての敬意を払っても、好ましい異性として好意を持つことはなくなってしまうだろう。
 ロベルトを激しい頭痛と後悔が襲った。
「馬車を正門ではなく東門に回せ」
 ロベルトは御者に王宮の正門ではなく、春宮殿の門を通る様に指示すると大きくため息をついた。
 覆水盆に返らずとは良く言ったものだと、ロベルトは考えながら柔らかいクッションにその身を預けた。

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