アントニウスを父の執務室に案内したジャスティーヌは、慌てて階段を駆け上がると、アレクサンドラの部屋に突進した。
部屋に突進して入ってくるのは、どちらかといえば、アレクサンドラの持ち業だが、アレクサンドラにまず劣らずといった様子でジャスティーヌが部屋に飛び込むと、アレクサンドラは憂いを漂わせて、カウチに寄りかかっていた。
「どうしたの、ジャスティーヌ。レディらしくないわよ」
落ち着いたアレクサンドラの声に、ジャスティーヌはカウチに通ると、アレクサンドラの手を取った。
「聞いて、アレク。いま、アントニウス様が来ているの。あなたに会いたいとおっしゃっていたわ。絶対に会うべきだわ」
アントニウスが来ているという言葉に、アレクサンドラは少し驚いたようだったか、ゆっくりと体を起こした。
「それならば、支度をするわ」
何も問いかけず、何の目的でアントニウスが来たのかも訪ねず、アントニウスか会いたいといっていると告げただけで、何も訊かずに身支度を整え始めたアレクサンドラに、ジャスティーヌはアントニウスがアレクサンドラに一目惚れしたと言い出し、アレクサンドラが突然アレクシスであることをやめると言い出した時から感じていた言葉に表せない不自然さを感じた。
「アレク、お願い教えて。あなたの態度は、アントニウス様に好意を抱いているというよりも、服従しているという感じだわ。もしかして、何か弱みを? まさか、アレクシスをやめるといったのは、あの遠乗りの日の事故で、アントニウス様に秘密を知られたとか・・・・・・」
賢いジャスティーヌならばいつかは気付くだろうと思っていたことだったので、アレクサンドラは何でもないといった様子を装い、ジャスティーヌの方を振り向いた。
「なんでそんな突拍子もないことを? もしそうなら、ジャスティーヌに相談するに決まってるじゃない。だって、私たちは双子なんだから。秘密はないでしょう? まあ、私からすれば、幼いころから殿下とジャスティーヌが密かに結婚の約束をしていたって話は寝耳に水だったけれどね。とにかく、レディ初心者としては、相手の期待を裏切らないように努力をするだけ。ただそれだけだよ」
「それならいいけれど・・・・・・」
アレクサンドラの説明を信じたわけではなかったが、ジャスティーヌはそれ以上何も言わなかった。
呼び鈴の紐を引くと、ライラがすぐに現れ、アレクサンドラの支度の仕上げを手伝い、支度を済ませたアレクサンドラは、ライラを伴い階下のサロンへと降りて行った。
残されたジャスティーヌは、納得が行かないままだったが、これ以上問題を増やすのも、既に両手にいっぱいに近い自分の進退だけで、アレクサンドラとアントニウスの事にまで立ち入る心の余裕は既になかった。
☆☆☆
部屋に突進して入ってくるのは、どちらかといえば、アレクサンドラの持ち業だが、アレクサンドラにまず劣らずといった様子でジャスティーヌが部屋に飛び込むと、アレクサンドラは憂いを漂わせて、カウチに寄りかかっていた。
「どうしたの、ジャスティーヌ。レディらしくないわよ」
落ち着いたアレクサンドラの声に、ジャスティーヌはカウチに通ると、アレクサンドラの手を取った。
「聞いて、アレク。いま、アントニウス様が来ているの。あなたに会いたいとおっしゃっていたわ。絶対に会うべきだわ」
アントニウスが来ているという言葉に、アレクサンドラは少し驚いたようだったか、ゆっくりと体を起こした。
「それならば、支度をするわ」
何も問いかけず、何の目的でアントニウスが来たのかも訪ねず、アントニウスか会いたいといっていると告げただけで、何も訊かずに身支度を整え始めたアレクサンドラに、ジャスティーヌはアントニウスがアレクサンドラに一目惚れしたと言い出し、アレクサンドラが突然アレクシスであることをやめると言い出した時から感じていた言葉に表せない不自然さを感じた。
「アレク、お願い教えて。あなたの態度は、アントニウス様に好意を抱いているというよりも、服従しているという感じだわ。もしかして、何か弱みを? まさか、アレクシスをやめるといったのは、あの遠乗りの日の事故で、アントニウス様に秘密を知られたとか・・・・・・」
賢いジャスティーヌならばいつかは気付くだろうと思っていたことだったので、アレクサンドラは何でもないといった様子を装い、ジャスティーヌの方を振り向いた。
「なんでそんな突拍子もないことを? もしそうなら、ジャスティーヌに相談するに決まってるじゃない。だって、私たちは双子なんだから。秘密はないでしょう? まあ、私からすれば、幼いころから殿下とジャスティーヌが密かに結婚の約束をしていたって話は寝耳に水だったけれどね。とにかく、レディ初心者としては、相手の期待を裏切らないように努力をするだけ。ただそれだけだよ」
「それならいいけれど・・・・・・」
アレクサンドラの説明を信じたわけではなかったが、ジャスティーヌはそれ以上何も言わなかった。
呼び鈴の紐を引くと、ライラがすぐに現れ、アレクサンドラの支度の仕上げを手伝い、支度を済ませたアレクサンドラは、ライラを伴い階下のサロンへと降りて行った。
残されたジャスティーヌは、納得が行かないままだったが、これ以上問題を増やすのも、既に両手にいっぱいに近い自分の進退だけで、アレクサンドラとアントニウスの事にまで立ち入る心の余裕は既になかった。
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