父からの手紙を手に、アントニウスはカウチに腰を下ろした。
もともと外交的で、部屋に留まることのないアントニウスが自分の部屋に半ば籠城しているのは、押しかけ女房ならぬ、母のマリー・ルイーズが一階のサロンを我が物顔で使っているからだった。
「きな臭いことになってきた」
一ページ目を飛ばし、二ページ目に進んだアントニウスは、コーヒーテーブルにカップを置くミケーレに言った。
「まさか、ポレモスでございますか?」
ミケーレは顔色を曇らせて問いかけた。
「さすがだな。いよいよ戦になるようだ。父上から、私も名ばかりとはいえ、陸軍に籍を置いているのだから、帰国するようにとのことだ」
アントニウスは言うと、続きのページにさっと目を通した。
アントニウスが一ページ目を飛ばした理由は簡単なことで、母のマリー・ルイーズがこちらに滞在しているときの父からの手紙の一枚目には、小言と母の様子を尋ねる言葉が綴られているだけなのを経験から学んでいたからだった。それでも、以前ならば一応は目を通したものの、母と屋敷の一階と二階に日中住み分けるほどに険悪な今、母を想う父の言葉など、アントニウスを苛立たせるだけだった。
「ミケーレ、父上かこの状況をお知りになられたら、なんとおっしゃられるだろうな?」
アントニウスの問いに、ミケーレは一瞬考えてから話し始めた。
「私が存じ上げる旦那様でいらっしゃいましたら、愛は自ら勝ち取るもの。他人に世話を焼いてもらうのも、他人の世話を焼くのも、本末転倒とおっしゃられることと存じます。ですか、先頭に立たれていらっしゃるのが奥様となりますと、旦那様は『良きに計らえ』の一言ではないかと・・・・・・」
さすがに、独身時代のマリー・ルイーズに仕え、共にイルデランザに移住しただけあり、ミケーレの読みはアントニウスの考えと全く同じだった。
「アントニウス様、もし、帰国なさるのであれば、一度、アレクサンドラ様のご機嫌伺と、それから、ロベルト様にもご挨拶に伺われたほうがよろしいのではございませんか?」
「そうだな、支度をしよう。父上の手紙では、今日にも、明日にも、こちらを立てと書かれていた」
「そのような急なお話でございますか」
ミケーレは言うと、すぐにアントニウスが王急に向かう支度を整えた。
☆☆☆
もともと外交的で、部屋に留まることのないアントニウスが自分の部屋に半ば籠城しているのは、押しかけ女房ならぬ、母のマリー・ルイーズが一階のサロンを我が物顔で使っているからだった。
「きな臭いことになってきた」
一ページ目を飛ばし、二ページ目に進んだアントニウスは、コーヒーテーブルにカップを置くミケーレに言った。
「まさか、ポレモスでございますか?」
ミケーレは顔色を曇らせて問いかけた。
「さすがだな。いよいよ戦になるようだ。父上から、私も名ばかりとはいえ、陸軍に籍を置いているのだから、帰国するようにとのことだ」
アントニウスは言うと、続きのページにさっと目を通した。
アントニウスが一ページ目を飛ばした理由は簡単なことで、母のマリー・ルイーズがこちらに滞在しているときの父からの手紙の一枚目には、小言と母の様子を尋ねる言葉が綴られているだけなのを経験から学んでいたからだった。それでも、以前ならば一応は目を通したものの、母と屋敷の一階と二階に日中住み分けるほどに険悪な今、母を想う父の言葉など、アントニウスを苛立たせるだけだった。
「ミケーレ、父上かこの状況をお知りになられたら、なんとおっしゃられるだろうな?」
アントニウスの問いに、ミケーレは一瞬考えてから話し始めた。
「私が存じ上げる旦那様でいらっしゃいましたら、愛は自ら勝ち取るもの。他人に世話を焼いてもらうのも、他人の世話を焼くのも、本末転倒とおっしゃられることと存じます。ですか、先頭に立たれていらっしゃるのが奥様となりますと、旦那様は『良きに計らえ』の一言ではないかと・・・・・・」
さすがに、独身時代のマリー・ルイーズに仕え、共にイルデランザに移住しただけあり、ミケーレの読みはアントニウスの考えと全く同じだった。
「アントニウス様、もし、帰国なさるのであれば、一度、アレクサンドラ様のご機嫌伺と、それから、ロベルト様にもご挨拶に伺われたほうがよろしいのではございませんか?」
「そうだな、支度をしよう。父上の手紙では、今日にも、明日にも、こちらを立てと書かれていた」
「そのような急なお話でございますか」
ミケーレは言うと、すぐにアントニウスが王急に向かう支度を整えた。
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