「今宵のあなたは、やはり、誰よりも一番可愛くて、独身男性陣の視線が刃の様に私の背に刺さってきましたよ」
アントニウスは言うと、茶化すように笑って見せた。
「まさか、ピエートルまで、あんな風に話しかけてくるなんて、私はアレクシスだったことが知られてしまうのではないかと、生きた心地もしませんでした」
アレクサンドラは、その時の事を思い出しながら言った。
「今のあなたを見て、アレクシスの事を思い出す人間など、誰もいないでしょう」
アントニウスは笑みを浮かべていった。
「それは、あなた以外はでしょう?」
アレクサンドラの言葉に、アントニウスがきょとんとした。
「私ですか? 今は、あのアレクシスがあなただったということの方が信じられませんよ」
アントニウスの言葉に、アレクサンドラはアントニウスの真意を探ろうとじっとアントニウスの事を見つめた。
「ダメですよ。そんな情熱的な瞳で見つめられたら、理性のたがが外れてしまいます。この狭い場所で、そのドレスでは逃げられないのですから、私に口づけられても文句は言えませんよ」
本気なのか、茶化しているのかわからないアントニウスの言葉に、アレクサンドラの頬が染まっていく。
「私は、そんなつもりはありません」
「それは残念だ。私は、あなたが許してくださるのなら、そのバラの花びらのような、愛らしい唇を味わいたかったのに」
「そういうことは、ちゃんとしたレディに言うものです。私には、そんな言い方をしなくていいのです。ただ、あなたのしたいようにすれば・・・・・・」
次の瞬間、アントニウスの両の手がドンと背面の板壁につかれ、アレクサンドラはアントニウスの両腕の間の狭い空間に閉じ込められる形になった。
「言ったはずです。もう、あのゲームは終わりです。私が知っているのはあなたの秘密ではない、アレクシスの秘密です。だから、私は今晩あなたに取り入ろうと躍起になっていたフランツと同じ、あなたに求婚する独身貴族の一人です。二度と、さっきのような言葉を口にしてはいけません。私は二度と、あなたにあの晩の図書室でのような事をして貰いたくはありません」
「でも、何事にも、口止め料がいるのが世の常なのではないのですか?」
「それならば、口止め料を払うのは、アレクシスだ。あなたではありません」
「でも、そんなことは・・・・・・」
同じ人間なのだから、アレクシスに口止め料を払わせろと言われても、アレクサンドラにはどうしたらいいかわからなかった。
「アレクサンドラ、愛しい人。あなたが私に教えてくれたのです。本当の愛のない相手と一緒に過ごす時間に快楽はあっても安らぎがないことを・・・・・・。あなたと過ごす時間は、蜜のように甘く、例え口づけする事さえできなくても、そこには安らぎがあると。だから、私は独身貴族の子弟の一人として、正々堂々、あなたに求婚したいのです」
『求婚』という言葉がとてもリアルに感じられ、アレクサンドラは必死になり、アントニウスに喧嘩を吹っ掛けようとしたフランツの姿を思い出した。
アントニウスは言うと、茶化すように笑って見せた。
「まさか、ピエートルまで、あんな風に話しかけてくるなんて、私はアレクシスだったことが知られてしまうのではないかと、生きた心地もしませんでした」
アレクサンドラは、その時の事を思い出しながら言った。
「今のあなたを見て、アレクシスの事を思い出す人間など、誰もいないでしょう」
アントニウスは笑みを浮かべていった。
「それは、あなた以外はでしょう?」
アレクサンドラの言葉に、アントニウスがきょとんとした。
「私ですか? 今は、あのアレクシスがあなただったということの方が信じられませんよ」
アントニウスの言葉に、アレクサンドラはアントニウスの真意を探ろうとじっとアントニウスの事を見つめた。
「ダメですよ。そんな情熱的な瞳で見つめられたら、理性のたがが外れてしまいます。この狭い場所で、そのドレスでは逃げられないのですから、私に口づけられても文句は言えませんよ」
本気なのか、茶化しているのかわからないアントニウスの言葉に、アレクサンドラの頬が染まっていく。
「私は、そんなつもりはありません」
「それは残念だ。私は、あなたが許してくださるのなら、そのバラの花びらのような、愛らしい唇を味わいたかったのに」
「そういうことは、ちゃんとしたレディに言うものです。私には、そんな言い方をしなくていいのです。ただ、あなたのしたいようにすれば・・・・・・」
次の瞬間、アントニウスの両の手がドンと背面の板壁につかれ、アレクサンドラはアントニウスの両腕の間の狭い空間に閉じ込められる形になった。
「言ったはずです。もう、あのゲームは終わりです。私が知っているのはあなたの秘密ではない、アレクシスの秘密です。だから、私は今晩あなたに取り入ろうと躍起になっていたフランツと同じ、あなたに求婚する独身貴族の一人です。二度と、さっきのような言葉を口にしてはいけません。私は二度と、あなたにあの晩の図書室でのような事をして貰いたくはありません」
「でも、何事にも、口止め料がいるのが世の常なのではないのですか?」
「それならば、口止め料を払うのは、アレクシスだ。あなたではありません」
「でも、そんなことは・・・・・・」
同じ人間なのだから、アレクシスに口止め料を払わせろと言われても、アレクサンドラにはどうしたらいいかわからなかった。
「アレクサンドラ、愛しい人。あなたが私に教えてくれたのです。本当の愛のない相手と一緒に過ごす時間に快楽はあっても安らぎがないことを・・・・・・。あなたと過ごす時間は、蜜のように甘く、例え口づけする事さえできなくても、そこには安らぎがあると。だから、私は独身貴族の子弟の一人として、正々堂々、あなたに求婚したいのです」
『求婚』という言葉がとてもリアルに感じられ、アレクサンドラは必死になり、アントニウスに喧嘩を吹っ掛けようとしたフランツの姿を思い出した。



