庭の芝生を踏みしめながら、ロベルトはジャスティーヌが転ばないように、ゆっくりとバラ園へと足を向けた。
「それにしても、アレクサンドラの豹変ぶりには驚かされたよ」
ロベルトの言葉に、ジャスティーヌは『アレクシスの豹変ぶり』とロベルトが言ったのかと、一瞬、耳を疑った。
「以前、見合いの時に逢ったアレクサンドラは、まるで君に瓜二つだったのに、今日、改めて公の場で目にしてみると、君と見間違えた自分の目がおかしかったとしか思えないくらい、君とは雰囲気が違う」
ロベルトの言葉に、ジャスティーヌは返す言葉がなく、一瞬、返事に躊躇した。
事実、アレクサンドラとして見合いをしていたのはジャスティーヌなのだから、ロベルトがジャスティーヌと見間違うほどだったというのは当然のことで、アレクシスからスパルタ式お嬢様修業を経て令嬢になったアレクサンドラと違うのは当たり前のことだった。
「それはきっと、殿下と私が、あのころよりももっと親密な関係になったからですわ」
自分で言いながら、レディが口にするのは、はしたない言葉を口にしてしまったことをジャスティーヌは後悔した。
「ジャスティーヌ、約束だよ。二人だけの時は名前で・・・・・・」
「ごめんなさい、ロベルト。・・・・・・以前の私なら、あなたの事を名前で呼ぶなんて、とても畏れ多くて、でも今はあなたの隣に居られることが当然のような気までしてしまうわ。だから、きっと、今のロベルトには私とアレクサンドラの違いがはっきり分かるのだと思うわ」
「そうだね。私も君以外の女性が隣にいる事など、もはや考えられない」
ロベルトは言うと、ジャスティーヌを抱き寄せた。
「実は、バラ園で新種のバラがもうすぐ花開くことが分かったんだ。だから、その新種のバラの名前を『プリンセス・ジャスティーヌ』という名前にして、私たちの婚約発表の時にそのバラのお披露目もしたいと思っている」
「まあ、どんなバラですの?」
「まだ花が咲いていないからはっきりは言えないが、濃いピンク色の八重で、花弁のふちがビロードの様になるはずだと庭師が説明してくれた」
「素敵ですわ」
バラの話にばかり夢中で、婚約発表という話題に盛り上がらないジャスティーヌに、ロベルトはいつもの事ながら苦笑した。
「愛しいジャスティーヌ、君は、本当に可愛らしい」
軽くこつんと二人の額がぶつかり合い、それに促されるようにジャスティーヌがロベルトを見上げた。そのジャスティーヌの唇にそっと触れるようにロベルトが口づけた。
月明かりにも明らかに、ジャスティーヌの頬がバラ色に染まっていく。
風が吹き抜け、ジャスティーヌのドレスの裾を翻させるとともに、甘いバラの香りをバラ園の方から運んできた。
「新種のバラを君に見せようと思っていたけれど、花が咲くまで、待つことにしよう。さあ、屋敷まで送ろう」
「バラが咲くのを楽しみにしております」
ジャスティーヌの手を取り、ロベルトは再び王宮の方へと足を向けた。
☆☆☆
「それにしても、アレクサンドラの豹変ぶりには驚かされたよ」
ロベルトの言葉に、ジャスティーヌは『アレクシスの豹変ぶり』とロベルトが言ったのかと、一瞬、耳を疑った。
「以前、見合いの時に逢ったアレクサンドラは、まるで君に瓜二つだったのに、今日、改めて公の場で目にしてみると、君と見間違えた自分の目がおかしかったとしか思えないくらい、君とは雰囲気が違う」
ロベルトの言葉に、ジャスティーヌは返す言葉がなく、一瞬、返事に躊躇した。
事実、アレクサンドラとして見合いをしていたのはジャスティーヌなのだから、ロベルトがジャスティーヌと見間違うほどだったというのは当然のことで、アレクシスからスパルタ式お嬢様修業を経て令嬢になったアレクサンドラと違うのは当たり前のことだった。
「それはきっと、殿下と私が、あのころよりももっと親密な関係になったからですわ」
自分で言いながら、レディが口にするのは、はしたない言葉を口にしてしまったことをジャスティーヌは後悔した。
「ジャスティーヌ、約束だよ。二人だけの時は名前で・・・・・・」
「ごめんなさい、ロベルト。・・・・・・以前の私なら、あなたの事を名前で呼ぶなんて、とても畏れ多くて、でも今はあなたの隣に居られることが当然のような気までしてしまうわ。だから、きっと、今のロベルトには私とアレクサンドラの違いがはっきり分かるのだと思うわ」
「そうだね。私も君以外の女性が隣にいる事など、もはや考えられない」
ロベルトは言うと、ジャスティーヌを抱き寄せた。
「実は、バラ園で新種のバラがもうすぐ花開くことが分かったんだ。だから、その新種のバラの名前を『プリンセス・ジャスティーヌ』という名前にして、私たちの婚約発表の時にそのバラのお披露目もしたいと思っている」
「まあ、どんなバラですの?」
「まだ花が咲いていないからはっきりは言えないが、濃いピンク色の八重で、花弁のふちがビロードの様になるはずだと庭師が説明してくれた」
「素敵ですわ」
バラの話にばかり夢中で、婚約発表という話題に盛り上がらないジャスティーヌに、ロベルトはいつもの事ながら苦笑した。
「愛しいジャスティーヌ、君は、本当に可愛らしい」
軽くこつんと二人の額がぶつかり合い、それに促されるようにジャスティーヌがロベルトを見上げた。そのジャスティーヌの唇にそっと触れるようにロベルトが口づけた。
月明かりにも明らかに、ジャスティーヌの頬がバラ色に染まっていく。
風が吹き抜け、ジャスティーヌのドレスの裾を翻させるとともに、甘いバラの香りをバラ園の方から運んできた。
「新種のバラを君に見せようと思っていたけれど、花が咲くまで、待つことにしよう。さあ、屋敷まで送ろう」
「バラが咲くのを楽しみにしております」
ジャスティーヌの手を取り、ロベルトは再び王宮の方へと足を向けた。
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