王宮の大広間で開催されている大舞踏会には、アレクサンドラの他にも陛下への謁見を済まし、社交界に正式にデビューした令嬢たちが両親と共に出席していた。
一足早く出発したロベルトとジャスティーヌも王族専用の車つけで馬車を降りたので、アレクサンドラの少し前を進んでいた。
「ロベルト王太子殿下並びに、アーチボルト伯爵令嬢ジャスティーヌ様のお着きでございます」
入り口でロベルトの到着が告げられると、ダンスを踊っていたカップルもダンスを止めてロベルトとそのパートナーであるジャスティーヌの到着を迎えた。
にぎやかだった会場が一瞬静まり返り、楽団の演奏する穏やかなワルツのメロディーだけが会場に流れていた。
以前のような、古いドレスのアレンジや着回しではなく、ロベルトの選んだ最高級のシルクとレースがふんだんに使われていながら、派手派手しくなく、繊細で美しいドレスに身を包んだジャスティーヌの姿は、屋敷を出る前にロベルトが口にした、言葉が嘘ではないことを物語っていた。
もともとジャスティーヌに好意を抱いていた男性だけでなく、大広間の男性陣のハートをすべて射抜いてしまうのではないかというくらい、シャンデリアから降り注ぐまばゆい光の中をロベルトにエスコートされ進む姿は、既に王太子妃の気品すら備えているようだった。
二人が舞踏会の主催者である国王陛下と王妃のもとへ挨拶に向かう姿を見送りながら、アレクサンドラはアントニウスと自分たちの番が来るのを廊下で待った。
二人が挨拶を終えたところで、再び案内の声がかかった。
「ファーレンハイト伯爵ならびに、アーチボルト伯爵令嬢、アレクサンドラ様のお着きでございます」
聞きなれない名前にアレクサンドラが戸惑っていると、アントニウスがアレクサンドラをエスコートして会場の扉をくぐった。
刺さるような、羨望のような、ありとあらゆる眼差しが二人に向けられた。そんなすべての視線を跳ね返すように、アントニウスはアレクサンドラをエスコートし、国王陛下と王妃のところへ挨拶に向かった。
「これはめでたいことだ。あの頭の固いアラミスがファーレンハイト伯爵の爵位をアントニウスに許すとは、これで何の引け目も感じることなく、ルドルフ秘蔵のアレクサンドラとも交際することが出来よう」
国王陛下はご機嫌な様子で言うと、アレクサンドラの方に視線を向けた。
「のう妃、せっかくだから二人が並んでいる姿を見たいと思わぬか?」
「はい、左様でございますね」
二人の言葉に、傍に控えていた侍従がジャスティーヌたちを呼び戻しに行った。
「アレクサンドラ、謁見の時のドレスも素晴らしかったが、今宵のそなたは、まるで妖精のように可愛らしい。アントニウス、気を付けぬと、会場中の紳士がアレクサンドラのハートを射止めようと、手ぐすねを引いているぞ」
ジャスティーヌが呼び戻され、アントニウスが一歩はなれると、ジャスティーヌとアレクサンドラの二人が国王陛下夫妻の正面に並んで立った。
「まことにルドルフは果報者だ。これほど美しい令嬢を二人も!」
「一人は、いずれ父上の義理の娘となるのですから、羨む必要はありませんよ」
ロベルトがすかさず言葉をかけた。
「それにしても、本当に、よく似ているものだ」
まだまだ話したそうにしている陛下に、侍従が耳元で何かを囁いた。
「これはいかん。廊下が案内待ちで溢れてしまうと、侍従たちが慌てている。二人とも、今宵はゆっくりと楽しんでいくがよい」
国王陛下の言葉を戴き、二組のカップルは一段高い上座の前を辞した。
一足早く出発したロベルトとジャスティーヌも王族専用の車つけで馬車を降りたので、アレクサンドラの少し前を進んでいた。
「ロベルト王太子殿下並びに、アーチボルト伯爵令嬢ジャスティーヌ様のお着きでございます」
入り口でロベルトの到着が告げられると、ダンスを踊っていたカップルもダンスを止めてロベルトとそのパートナーであるジャスティーヌの到着を迎えた。
にぎやかだった会場が一瞬静まり返り、楽団の演奏する穏やかなワルツのメロディーだけが会場に流れていた。
以前のような、古いドレスのアレンジや着回しではなく、ロベルトの選んだ最高級のシルクとレースがふんだんに使われていながら、派手派手しくなく、繊細で美しいドレスに身を包んだジャスティーヌの姿は、屋敷を出る前にロベルトが口にした、言葉が嘘ではないことを物語っていた。
もともとジャスティーヌに好意を抱いていた男性だけでなく、大広間の男性陣のハートをすべて射抜いてしまうのではないかというくらい、シャンデリアから降り注ぐまばゆい光の中をロベルトにエスコートされ進む姿は、既に王太子妃の気品すら備えているようだった。
二人が舞踏会の主催者である国王陛下と王妃のもとへ挨拶に向かう姿を見送りながら、アレクサンドラはアントニウスと自分たちの番が来るのを廊下で待った。
二人が挨拶を終えたところで、再び案内の声がかかった。
「ファーレンハイト伯爵ならびに、アーチボルト伯爵令嬢、アレクサンドラ様のお着きでございます」
聞きなれない名前にアレクサンドラが戸惑っていると、アントニウスがアレクサンドラをエスコートして会場の扉をくぐった。
刺さるような、羨望のような、ありとあらゆる眼差しが二人に向けられた。そんなすべての視線を跳ね返すように、アントニウスはアレクサンドラをエスコートし、国王陛下と王妃のところへ挨拶に向かった。
「これはめでたいことだ。あの頭の固いアラミスがファーレンハイト伯爵の爵位をアントニウスに許すとは、これで何の引け目も感じることなく、ルドルフ秘蔵のアレクサンドラとも交際することが出来よう」
国王陛下はご機嫌な様子で言うと、アレクサンドラの方に視線を向けた。
「のう妃、せっかくだから二人が並んでいる姿を見たいと思わぬか?」
「はい、左様でございますね」
二人の言葉に、傍に控えていた侍従がジャスティーヌたちを呼び戻しに行った。
「アレクサンドラ、謁見の時のドレスも素晴らしかったが、今宵のそなたは、まるで妖精のように可愛らしい。アントニウス、気を付けぬと、会場中の紳士がアレクサンドラのハートを射止めようと、手ぐすねを引いているぞ」
ジャスティーヌが呼び戻され、アントニウスが一歩はなれると、ジャスティーヌとアレクサンドラの二人が国王陛下夫妻の正面に並んで立った。
「まことにルドルフは果報者だ。これほど美しい令嬢を二人も!」
「一人は、いずれ父上の義理の娘となるのですから、羨む必要はありませんよ」
ロベルトがすかさず言葉をかけた。
「それにしても、本当に、よく似ているものだ」
まだまだ話したそうにしている陛下に、侍従が耳元で何かを囁いた。
「これはいかん。廊下が案内待ちで溢れてしまうと、侍従たちが慌てている。二人とも、今宵はゆっくりと楽しんでいくがよい」
国王陛下の言葉を戴き、二組のカップルは一段高い上座の前を辞した。



