二人が階段を下りているところに、玄関の扉が開き、ロベルトとアントニウスが姿を現した。
「ロベルト殿下並びに、アントニウス殿がお迎えに見えられました」
家令の言葉に、ジャスティーヌは歩く花の如く、優雅に階段を降り、一階の大理石を引き詰められた玄関前のスペースへと降り立った。
「ああ、ジャスティーヌ。私の見立てが間違っていなくてよかった。約束しよう。今宵の舞踏会で、一番美しいレディはジャスティーヌ、あなただ」
ロベルトは言うと、ジャスティーヌの手を取った。
「殿下、わざわざお迎えに来て戴き、光栄でございます」
「では、参ろうか」
「はい」
甘く見つめ合う、相思相愛の二人を見送りながら、アレクサンドラは大理石の床に足を下ろした。
「アレクサンドラ、愛しの君。私の見立てたドレスがお気に召していると良いのですが・・・・・・」
アントニウスはいつもに増して凛々しい出で立ちで、思わずアレクサンドラは見惚れてしまいそうになりながら、慌てて返事をした。
「はい。でも、私には、とても・・・・・・可愛すぎる気がしました」
アレクサンドラが本音を言うと、アントニウスが笑みを浮かべた。
「私は知っています。いつも強く振舞っているあなたの本当の心は、この開きかけているつぼみの花のように繊細で可憐だということを・・・・・・。お約束します。今宵の舞踏会で、あなたよりも可愛らしいレディは他に居ないと」
「そんな・・・・・・。可愛くて素敵なレディは大勢いらっしゃいます」
「では、言い方を変えましょう。私にとって、あなたよりも美しく、可愛らしいレディは他にはいない。今宵のあなたは、私一人のものとお約束ください」
アントニウスは言うと、大理石の床に膝をついてアレクサンドラの事を見上げた。
その申し出は、強制でも脅してもなかったが、アレクサンドラは断ることが出来なかった。
「はい。あなた以外の誰とも、今宵は踊らないとお約束します」
アレクサンドラが答えると、アントニウスはアレクサンドラの手の甲に口づけを落としてから立ち上がった。
「では、参りましょうか」
「はい。アントニウス様」
アレクサンドラが答えると、アントニウスはアレクサンドラの手を取り家令に見送られながら屋敷を後にした。
本来ならば、二カップルを見送る立場にあるはずの伯爵と伯爵夫人は、『今日は、本人たちだけの世界に浸らせてほしい』というマリー・ルイーズからの手紙に従い、姿を屋敷の奥に隠していたが、それぞれ、既に支度は整っており、二組のカップルが屋敷を後にしたのを確認すると、ゆっくりと重い腰を上げ、最近サスペンションの調子が悪く揺れの激しい馬車に乗り込み、王宮を目指した。
☆☆☆
「ロベルト殿下並びに、アントニウス殿がお迎えに見えられました」
家令の言葉に、ジャスティーヌは歩く花の如く、優雅に階段を降り、一階の大理石を引き詰められた玄関前のスペースへと降り立った。
「ああ、ジャスティーヌ。私の見立てが間違っていなくてよかった。約束しよう。今宵の舞踏会で、一番美しいレディはジャスティーヌ、あなただ」
ロベルトは言うと、ジャスティーヌの手を取った。
「殿下、わざわざお迎えに来て戴き、光栄でございます」
「では、参ろうか」
「はい」
甘く見つめ合う、相思相愛の二人を見送りながら、アレクサンドラは大理石の床に足を下ろした。
「アレクサンドラ、愛しの君。私の見立てたドレスがお気に召していると良いのですが・・・・・・」
アントニウスはいつもに増して凛々しい出で立ちで、思わずアレクサンドラは見惚れてしまいそうになりながら、慌てて返事をした。
「はい。でも、私には、とても・・・・・・可愛すぎる気がしました」
アレクサンドラが本音を言うと、アントニウスが笑みを浮かべた。
「私は知っています。いつも強く振舞っているあなたの本当の心は、この開きかけているつぼみの花のように繊細で可憐だということを・・・・・・。お約束します。今宵の舞踏会で、あなたよりも可愛らしいレディは他に居ないと」
「そんな・・・・・・。可愛くて素敵なレディは大勢いらっしゃいます」
「では、言い方を変えましょう。私にとって、あなたよりも美しく、可愛らしいレディは他にはいない。今宵のあなたは、私一人のものとお約束ください」
アントニウスは言うと、大理石の床に膝をついてアレクサンドラの事を見上げた。
その申し出は、強制でも脅してもなかったが、アレクサンドラは断ることが出来なかった。
「はい。あなた以外の誰とも、今宵は踊らないとお約束します」
アレクサンドラが答えると、アントニウスはアレクサンドラの手の甲に口づけを落としてから立ち上がった。
「では、参りましょうか」
「はい。アントニウス様」
アレクサンドラが答えると、アントニウスはアレクサンドラの手を取り家令に見送られながら屋敷を後にした。
本来ならば、二カップルを見送る立場にあるはずの伯爵と伯爵夫人は、『今日は、本人たちだけの世界に浸らせてほしい』というマリー・ルイーズからの手紙に従い、姿を屋敷の奥に隠していたが、それぞれ、既に支度は整っており、二組のカップルが屋敷を後にしたのを確認すると、ゆっくりと重い腰を上げ、最近サスペンションの調子が悪く揺れの激しい馬車に乗り込み、王宮を目指した。
☆☆☆



