「先輩、お久しぶりですね」

「ああ」

先輩は、高校の部活で一緒だった。繋がりはそれ以下でも、以上でもない。けれど、憧れの先輩だったのだ。

「先輩は、どうしてこの大学を選んだのですか?」

「なりたいものがあったんだ」

「なりたいものですか?」

「ああ、俺は通訳ガイドになりたいんだ」

聞いたことのない単語である。

「通訳ガイドとはなんですか」

「外国から来た人に日本文化や歴史を伝えながら目的にあった場所に案内していくという職業なんだ」

「先輩にもそんな夢があったんですね。意外です」

表情の見られないように隠しながら、告げた。その言葉はしっかりと先輩の耳に届いていたみたいだった。

「そういうなら、どういう理由でこの大学を選んだのか?」

「秘密です。バカで鈍感な先輩には教えません」

ウインクをサービスした後に後ろを向いた。

「本当に、バーカ」

先輩の憧れている姿に憧れたなんて言えるわけがなかったのである。