何回も目が覚めた

天井に黒ネコみたいなシミがあった

看護婦さんがたまに懐中電灯を照らしながら見回りにきた

「眠れない?」

わたしより少しだけ年上らしき看護婦さんが言った

「怖い夢みて…」

わたしは海に溺れる夢の話をした

「大丈夫、大丈夫、わたしと約束してください、もう薬はたくさん飲まないと」

看護婦さんは静かに言った

「亡くなられたかたを何人か見てきました、危険ですから約束してください」


わたしは、はい、と言った

看護婦さんはニッコリ笑ってまた見回りに行った


わたしはまた一人


冷たく薄い緑のカーテン

黒ネコのしみ

隣のベッドの人がずっとうなっていた