河川敷に降りて芝生の上に2人で並んで腰を下ろす。

そしてタイミングよく目の前の暗い夜空に一筋の光がヒュルヒュル…と音を立てて昇ると突如、大きくて綺麗な大輪の花が夜空に1個、花開いた。

そして続くように、赤、青、黄色…夜空に次々と大輪の花は咲いていく。

それは2年前、大好きだった彼と見るはずだったもので…

『咲耶は、笑うと可愛いな。』

『バカだなぁ、咲耶は…』

『咲耶…、花火、見に行こ。』

『咲耶…、』『咲耶。』

そして、それは花を咲かせるだけではなく優しくて愛しい彼の言葉も咲かせては儚く消えていった…。

「バイバイ…先輩…ううん、蓮くん。」

それらにお別れをするようにボソリとそう呟けば一筋の涙が頬を伝う。

「市村くん花火綺麗だね…。」「うん。」

涙を拭うこともせずに綺麗な大輪に目を奪われているとそっと隣にいる彼の手が私の手に触れた…。

そしてまた大輪が花を開く。

『咲耶…好きだ。』
「咲耶…好きだ。」

また咲いた先輩の言葉と重なるように隣にいる彼はそう呟くと私の瞳を真っ直ぐに見つめた…。

「…え…。」

そして止むことなく花は次々と咲いていく。
戸惑う私を無視するかのように。

『幸せになるんだよ。』

そして、過去に言われたことのない初めての先輩の言葉…。

その言葉に私はゆっくりと微笑むと

(分かったよ…蓮くん。)

そう心で答えた。

そして隣に座る彼にも…。

『私も…好きだよ。』

花火が咲くと同時に真っ直ぐと彼の瞳を見つめ返して答えた。

多分君が好き。

その真っ直ぐな視線も。

優しい行動も。

頼もしい背中も。

すべて全て愛おしく思えたんだ…

だからこの先もまた夏がきて花火が上がってその度に夜空に咲く大輪の花に目を奪われている君の横顔を飽きることなく見つめていたい…そうおもった。
〜完〜