祝福されずに生まれてくる子供なんて存在しない。
そう教えてくれたのは何の物語だっただろう。
それは小説だっただろうか。漫画か映画だっただろうか。それともドラマだっただろうか。
記憶が曖昧なのは僕が全くそれを信じることができなかったことと無関係ではないのかもしれない。

僕達は望まれず、祝福されずにうまれた。
僕達は彼らにとって、ただのストレスをぶつける道具に過ぎなかった。玩具にしか過ぎなかった。
僕と弟はいつも彼らに遊ばれる。
彼らは僕達を虐待している。
とはいえ、母は僕達に危害を加えていない。僕達を傷付けない。
毎日、父が暴力を振るう。
母はそれを見て見ぬ振りをするだけだった。
始めの頃は父を止めていたが、いつの間にかそれもなくなっていた。
でも、母はいい人だった。
父の見ていない所で僕達の傷の手当てをしてくれたり、食べ物をくれたりしていた。
そして僕達2人を優しく抱きしめ『辛かったね』『ごめんね』と僕達の頭を泣きながら撫でていた。
母と共にいる時間だけが僕達にとって唯一安心できる時間だった。
だが、そんな母も父に暴力を振るわれるようになってしまった。そして家を出た。
父が僕達のことを渡さないと言っていたらしい。
母は家を出る時、こんなことを言った。
「2人の名前は美しく“咲”き誇る“命”なのに…ごめんね。ごめんなさい。でもいつか絶対迎えに来るからね。…本当にごめんね…」