「射止められたのかしら? 私には、よく分からないわ」

「でも、こんなに可愛らしい女の子がいるじゃない」

「そうね……エレアノーラ様がいなくなった直後、ヴィンセント様はすぐに貴女を追い掛けようとしていたのよ」

「そうだったの?」

「ええ。でも、私が止めたの」

「貴女にしては珍しいんじゃない?」

「そうね」

「何故、止めたの?」

「エレアノーラ様の想い人がヴィンセント様じゃないと気付いたからかしら」

 正直、確信はなかった。それでもユアンに縋りついた彼女は〝女の顏〟をしていた。

 白皙の指先が求めたのはヴィンセント様の手じゃない。遠のく背中を目で追って私は、そう思った。

 だから追いかけたところで彼が報われることはないのだ。それなのに引き留める腕を振り払う彼は必死だった。