「…なぁ、顔すっげーブサイクだけど」


「っ、うっさい、ですっ…」


私を覗き込んだ彼の顔が視界に広がって、何故だかボロボロと透明な粒が頬を伝った。


「あー、泣くなよ…」


「えっ…」


彼の言葉とともに背中に回された腕から暖かさが伝わってきて、私は思わず流れていた涙を止める。


「お前、泣くほど俺のことが好きだったんだな」


「はっ!?ち、ちが…っ、勘違いしないでください!」


抱きとめられたまま耳元に聞こえた彼の嬉しそうな声に、反射的に否定をかぶせる。


「素直じゃねーな。…俺は、お前のことが好きだよ」


「え…ぇえっ!?」


思ってもいない言葉に激しく胸を叩く音を感じながら顔を上げれば、彼はクスクスと笑って私を見つめた。


「…なぁ、俺のこと、待っててよ」


「え……」


「留学する前に伝えようと思ってたんだ……凛。
俺は、お前との関わりをこれっきりにしたくない。これからも一緒に過ごしていたいんだ」


「っ、」


心臓が、甘い音を立てる。
これはきっと、私の本心。


「はい、ずっと待ってます……暁良先輩」


初めて呼んだ彼の名前は、とても心地がよくて。


さっきまでの不安なんか消え去ったように、私は「Welcome(行ってらっしゃい)」なんて言葉を彼に送った。