彼氏が最近かまってくれないので、彼女反撃を開始します

「...ただ」

「ん?」

まだ話は続いていたらしい。
改めて耳を澄ませてみるものの、聞こえるのはリンリンと鳴く鈴虫の声。
言い難いことなのか、なかなか言葉が出てこないようだ。
手首を掴む力だけが強まる。
しばらくの沈黙を破り、彼は言った。


「お前...が、隣にいればいい」


シンとした空間の中、その言葉が谺響する。

一瞬頭が真っ白になったが、意味を改めて理解すると顔が熱くなってきた。
困惑していると、智樹が「んな過剰反応すんな!」と顔を真っ赤にして怒鳴った。
そして手首から手を離したと思えば、スタスタと前を進んでいき、私を置いていこうとする。

ん?そもそも智樹と帰る約束してたっけ?してないよね?

立ち止まって考えていると、彼も立ち止まり「おーい!」と大声を出し、呼びかけてきた。

視線を向けると、彼は手に持っている私の荷物を上へ上げ、"俺が持っているぞ"とでも言うように振り回し始める。


「さっき、俺が言った言葉忘れたのかよ」


それだけ言うと、再び歩き出す。

その瞬間、何故だか智樹が可愛く見えて、近くまでダッシュで向かい、腰へ飛び蹴りをかます。
案の定、彼は痛そうに腰をさすって私を見つめるが、そんなの知らない。

「素直じゃないな~」

「...るせ」

こうして私は久々に智樹と一緒に帰宅できたのだった。

私の1日目の反撃劇は成功して終えた。


『このままだとバレーに影響しちゃう。
だから__

"飴と鞭を使い分けな"』

《作戦3:飴と鞭》