さっきと同じ目線、雰囲気、状況ならムツがいないだけだ。
だが、さっきの真帆の行動。それだけで千紗はさっきとは比べ物にならない恐怖を感じる。
具体的なものは浮かばない。だが、本能が"ヤバい"と叫んでいた。
そんな状態ながらも、千紗は震える声で訴えた。
「ま、真帆ちゃん...なんで....なんでムツにあんな事...そりゃあムツも悪いけどさ、でも...殴るなんて絶対におかしい!!真帆ちゃんどうしちゃったの!!?」
千紗は勇気を振り絞って声を荒らげる。それに対して真帆は顔色一つ変えずにゆっくりと口を開いた。
「.......先輩。先輩が私に対して犯した罪を言ってみて下さい。」
「え?それってどういう」
「質問ばっかしないでよ!!さっさと答えろって言ってるのが分からないの!?このド底辺糞女がッ!!」
真帆の怒号に千紗はビクッと身体を跳ねさせた。穏やかで真面目、とても仲良く出来ていた真帆からの質問、言葉に千紗は胸を苦しめられた。
自然と涙が溢れてきていた。悲しいというより辛すぎる、苦しすぎ故の涙。
「わ、私が真帆ちゃんにした悪い事....」
千紗にとって思い当たる節は無かった。いつも楽しく遊んでいたと思っていたから尚更、ただ一つだけとても小さい事だけ思い出した。



