晶子は真帆の飽き性には理解していた。晶子にとっては高校だからこそ何か熱中して欲しいと思っての気遣いだった。
「....そんな事言われても...やる気起きないし、帰宅部で結構。」
「そんな事言わないでよ。ほら、資料にもこんなに部活の事とか書いてあるし....」
晶子は歩きながら手元の資料を広げた。タイトルには"新入生オリエンテーション"と大きく書かれていた。
真帆はその資料には見覚えがあった。だが、そんなものは手元にはなく胸の内側から何かが押し寄せる感覚を感じた。
「ね、ねぇ晶子。その資料って...必要だっけ?」
「ん?当たり前じゃん。必要じゃないなら配られないよ。もしかして....忘れちゃった?」
真帆は黙って首を縦に振る。
確かに言われてみればそうだった気がする...ハゲの学主任が念押しに言ってた気が....
話もそうだけど、学校生活自体興味なかったから流して聞いてちゃった...
後悔がよぎる。いつもこんな感じ、中学の時までもボーッと過ごしてきていたから、よく大事な事を聞き落としていた。
「ごめん、先行ってて。私、急いで取りに行くよ。」
真帆はそれだけ伝えると、歩いてきた道を辿って走った。十分前に行動したので十分前に着く訳では無い。時間は限られていた。それが真帆にさらなる焦りを与えた。



