「分かってるよ。それじゃあ!」
千紗はリビングを飛び出し、玄関で靴を履き替える。その時、ある事を思い出した。
「あっ!そだそだ。忘れてたよぉ〜ん。」
千紗は部屋に戻って一眼レフを持ってきた。散歩をする時にはいつも持ち歩いているのだ。千紗にとって写真撮影はそれ程自分を夢中にさせてくれるものだった。
玄関の若干重いドアを開け、飼い犬ムツの元へ駆け寄る。
「よしムツ!お母さんはぐうたらさんだから、今日も私が....あれ?」
犬小屋の横に白い封筒が視界に映った。千紗は封筒を手に取り、表紙を見た。
表紙には「千紗へ」と一言だけ書かれていた。
「ん?何だろ....もしかして悠?だとしても....なんでこんな面倒な事を....」
千紗はわけも分からないまま、封筒を開いて紙を取り出した。
取り出した一枚の紙には手書きの地図が書かれていて、その裏にもまた文字があった。
「『千紗にどうしても伝えたいことがある。散歩がてらに地図を見ながらここに来て欲しい。』....か....この感じだと...悠しかいないなぁ〜。」
千紗は目の前の悠雅の家をチラッと見たが、そこに悠雅はいるわけでもない。
千紗はもう一度地図をよく見てみた。
「ん〜。ここってもしかしてそこの山の事かな?」



