花瓶─狂気の恋─


雫は悠雅の傍でしゃがみ込み、少し時間を空けてから首に手を置いた。
真帆はその雫の姿を涙目で見るしかなかった。

数秒後、雫はスっと立ち上がり真帆へ悲しそうな目を向けた。


「...脈がない。残念だけど、悠雅君は死んでしまったわ。」


心の端では察していた。雫の言った言葉が本当だと心の底では思っていたが、真帆の理性はそれを許さなかった。


「....何言ってるの...そんなわけないじゃん!あんたの測り方が悪かっただけでしょ!!どいてよ!!」


真帆は立ち上がり、雫を乱暴に退かすと首元に指を当てて集中する。だが、いくら待っても血が流れる感触はしなかった。
真帆は悠雅が死んでしまったという事実を味わった。

いつも以上の絶望。悠雅に千紗という幼馴染がいた事、悠雅がバイセクシュアルという事、その時に感じた絶望とは比にならないほどの黒く深い崖に真帆は突き落とされた。


「先輩...嘘でしょ....私は...先輩と一緒にいたい...好きになってもらいたい、望みはそれだけだったのに...なんで....なんでよぉ...」


真帆は顔を涙でグシャグシャにしながら、悠雅の亡骸に抱き着いた。あの悠雅の太陽の日差しのような温もりを感じることは出来ず、真帆は悲しみに溺れた。


「....真帆...」