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家に帰っても腹の中でのどす黒い何かは止まることが無かった。真帆を煽るようにお腹の中で暴れ、それは次第に心臓を強く締め付けた。
昨日と全く同じなのにたった一つの出来事で天と地の差。天国と地獄を味わっていた。
今までの恋愛系の映画や漫画、小説を鑑賞した経験で、幼馴染という立ち位置であの距離感は手に負えないものがあると悟っていた。
真帆には無いものを千紗は多く持っていた。
それを逆転するには相当の容姿や、悠雅が持っている真帆の印象が大きくなければならない。だが、それは部活動で接近しても写真にしか集中しなかったことで明らか。
努力さえ惜しまなければ、悠雅との距離はその結果によっては縮まり、千紗を抑えてゴールインもありえる。その希望を真帆は見失ってはいない。
だが、真帆はもう一つのことでも絶望していた。
何で...なんで私ばっかりこんな目に....やっと真剣になれた...生まれて初めて恋をした。それがたったの一日で....
何で壁があるの?何でそのまま走らせてくれないの?
私が悪い事を何かしたの?報われてもいいじゃん...もう報われたっていい筈なのに、何でこんな...試練ばっかり目の前に...
真帆は天井を見上げながら涙を流した。
今までの真帆は"退屈"と"真剣に、熱中することが出来ない"という試練、運命に阻まれていた。それからやっと抜け出せたと思っても、また試練。



