"貴女に理解者なんているもんか!"桃の言葉がふと頭に浮かび上がる。必死だったからなのか本心なのか分からないが、真帆にとっては頭から離れられない言葉。


私が欲しいもの....悠雅先輩は勿論として、真の理解者が欲しい。雫みたいに作品のためって訳じゃなく、自分のように喜び支えてくれる人が。


そんな欲求を胸にして、桃が失踪してから四日が経っていた。生徒が続いて失踪して生徒全員に暫くの自宅待機を言われ、警察も血眼になって犯人を探していた。


真帆は麻紀と桃をさらった"東崖山"で、スマホで時間を潰していた。何度来ても慣れない獣臭に顔を顰めながら、木々の間から漏れる日光に当たっていた。身体がポカポカと温まり、すぐにでも横になって日向ぼっこをやりたくなる。

外出するだけで怪しい目を向けられるこの状況で、真帆はある人物を待ちわびていた。自分の理解者になってくれると信じて、その人物が来ることに胸を踊らせていた。

草木が揺れる音がした。真帆はスマホをポケットにしまい、その揺れる音の方を真っ直ぐ見つめた。


出てきたのは晶子だった。真帆はその姿を確認するとニコッと笑ったが、晶子は何か緊迫そうな顔をしていた。


「ここまで来てもらってありがとう晶子。私、本当に嬉しい。」