桃は自然と涙を流していた。ガクガクと口を上下に震わし、息が荒れた。顔から血の気が引いて、真帆の言う通りに右手に意識を向ける。
感覚がない。握り拳を作ろうとするが、何の感触もなかった。指と指、爪と肌が触れ合ういつもの感覚が無かった。
「へ?...嘘....いや....いやぁぁぁぁぁぁぁ!!誰かぁ!誰か助けて!!死にたくない!死にたくない!死にたくないぃぃぃ!!」
身体をブルブルと震わせて泣き叫んだ。コンクリートに反射し、自分の声が自分の脳を刺激して更にパニックを引き起こす。それでも聞こえる血が後ろで流れる音、自分が右腕を切り落とされたという事実を強く感じてしまう。
「死にたくないって....私を刺し殺そうとしたくせに何言ってんの?アホなの?」
「ごめんなさい!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃ!許して!許して下さい!!助けてぇ!」
「あの豚の時もそうだったけど、本当に追い詰められるとワンパターンなんだね。まぁ、それがとても気持ちがいいんだけどね。
始まる前に両足を切っておいてあるから...左腕を切ればダルマ完成でね!じゃあいっくよ〜!」
真帆は意気揚々と桃の視界から消えて後ろへ立回る。これから切られてしまう、桃の脳に危険信号が響き渡る。



