花瓶─狂気の恋─


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肌を刺激する冷気と秒針の音で桃は目を覚ました。小汚いコンクリートに囲まれた世界で豆電球がチカチカと音を鳴らしながら光っていた。
まるで映画のワンシーンに入ったかのような感じ。

桃はハッキリ覚めてない意識の中、身体を動かそうとするが動けなかった。正確には動けるが何かが邪魔をしているのだ。

普通では有り得ない事の連続で、意識も徐々にハッキリしていく。もう一度動こうと身体を跳ねるように動かすが、やはり身体は固定されている。顔すらガッチリ固定されており、自由に動かせるのは瞼と口だけだった。


現状、桃が理解できるのはコンクリートの部屋で椅子のようなものに手を後ろに回される形で固定されているしか分からなかった。


「はぁ.....はぁ...な、なんなのここ!誰かぁ!誰かいませんかぁ!?」


そんな叫びも虚しく、コンクリートの壁に反射するだけで何も返答は返ってこなかった。
その意味に桃は絶望する。誰も助けに来てくれない、真帆に料理をされるだけという真実。

いっその事、舌を噛んで死んでしまうかと考えた時、後方からコンクリートの重いドアが開く音がした。コツコツと近づいてくる音が聞こえ、桃の心拍数が上昇していった。


その足音の正体は桃の目の前に来て、折り畳みの椅子を展開して座った。足組をして小さい手帳とボールペンを手に取った。