真帆を刺してから、「これ以上は危ない」と脳が危険信号を送っていたからだ。
はぁ....さっさと帰って悠雅先輩との妄想デートしよっと....
生徒玄関に着いて靴を履き替えようとした時、隣にある人物が桃を見ていた。その視線に気が付いていたが、感覚で合わせてはいけないと感じでいた。
「矢内さん?」
その声には聞き覚えがある。自分が憎んで刺した相手、神崎真帆が顔を覗かせていた。
桃は汗がドバッと吹き出し、身体の体温が一気に冷え込む。頭の中が台風のように荒れて考えがまとまらず、顔を見られてはいけないとしか思えなかった。
「は、はい...さようなら....」
桃はボソッと呟くと顔を見られないように逃げようとするが、真帆に腕を掴まれる。心臓が弾け、頭の中で悠雅との未来が消えかけた。
「矢内さん。なんか変だよ?どうかしたの?」
あれ?....本当は私の顔を見てない?この感じ...見られたと思ってたけど、実際は全然見られてなかった?
そんな考えが頭をよぎる。これ以上この態度だと、自分の考えが正しくて気付いていないだけなら怪しさを増すだけ。
桃は勇気を振り絞って顔をゆっくりと上げた。
青ざめている桃に対して真帆はキョトンとした顔をしていた。その顔を見て桃は少し顔が明るくなった。



