真帆は彼の背中を見てポーっとしていた。
なんだろうあの人...何で私、あの人に見とれてるんだろ?それにしても....手を握られた時はビックリしたなぁ...
真帆は自分の両手を見つめる。身体の熱のせいか、手汗が溢れていた。悠雅の手、それが頭から離れず、今もまだあるようにも感じる。
「...手汗、すごいって思われちゃったかな....
あれ?私、何でそんなこと気にしてんだろ...やっぱり頭打ったかな?」
そんな事を呟く。
廊下でただ一人ポツンっと突っ立っている真帆。だが、状況とは裏腹に彼女自身は真逆の状態だった。
熱が引かない。心臓の鼓動が収まらず、張り裂けそうだ。悠雅の顔を思い浮かべるだけで胸は苦しい、だが幸せな気分。
そんな矛盾な感情が押し寄せ、真帆は戸惑う。だが、気持ちは高揚して悪くない、寧ろ幸福感で満たされた。
この気持ちがよく分からないけど...これが神様からの贈り物だとすれば....神様って最高。
真帆は時間の事など頭から消えていて、廊下は走らずにとぼとぼ歩いた。
当然ながら時間通りに真帆は間に合わなかった。体育館に入ると既にオリエンテーションは始まっていて、担任には遅れた理由を伝えて列に入った。学年主任から鋭い目線を向けられていたのは分かったが、さっきの出来事のせいか全く気にしなかった。



