花瓶─狂気の恋─


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翌日、悠雅は通常通りに学校へ来ていた。流石に昨日の今日では疲れ気味な表情を浮かべ、悠雅のクラスメイトは心配していた。
だが、真帆にとっては新たな悠雅の顔であり、自分のご褒美でしかなかった。

真帆はニヤニヤしながら、部活という建前を屋上から悠雅の写真を何枚もおさめた。


ふふ...これで先輩のコレクションが増えたぁ〜。隣で喋ってる茶髪のやつはちゃんと切り取っておこっと。


真帆はある程度写真を撮ると、自分の教室へと戻ろうと屋上を後にした。
屋上の階段を降りていると、一人の女子高生がポツンと立っていた。真帆は視線を感じ、階段を降りるのをやめた。その女子高生に真帆は見覚えがあった。


「....矢内さん?」


矢内 桃。真帆と同じく写真部でクラスこそ別だが一年生。長い三つ編みで縁が薄いメガネ、特に目立った行動はしない静かな子というイメージだった。

真帆は話しかけたが、応答は無かった。ただ、真帆の足元をじっと凝視していた。
まるで自分の仇を冷静に見つめるかのような冷たく、鋭い目付きに真帆は冷や汗をかく。


まさか...この子が....害虫?


あまりの不審な行動に真帆は雫が言っていた害虫を思い出した。