「それから毎日のようにケーキが置いてあって、いつかこれを作ってる子と話したいって思ってたんだ」


まさか、利仁くんが覚えててくれたなんて。


楽しみに食べてくれてたなんて。


嬉しすぎて頬が緩んじゃう。



「いつだったか椿ちゃんとすれ違ったとき、甘いにおいがしてさ」


もしかして、利仁くんは……。


「それでわかったんだ。この子がお菓子をくれてる子だって。それからずっと、キミを見てたよ」


ずっと私のことを探してくれてたの?


そんなに私の作るお菓子を気に入ってくれたのかな?



「椿ちゃん、いつもありがとう。キミの作ったケーキは、誰のよりも美味しいんだ」


パティシエになりたい。


そう思ってお菓子作りをしてきた私だけど。


初めて他の人にあげて、喜んでくれた。



そして、それをきっかけに利仁くんが私を気にしてくれるようになったなんて。


こんな都合のいい話、ほんとにあるんだね。