「聞こえなかった?俺が椿ちゃんを選んだんだ」


もう、利仁くんったら。


私のどこを好きになったの?


利仁くんなら、もっとかわいい子だって寄ってくるだろうし選び放題なのに。


なんでよりによって私なんだろう?


いいところなんて思いつかないのに。



「だから、手出したら許さないよ」


か、かっこいい……。


私のためにそこまで言ってくれるなんて。




「ほら、行こう。椿ちゃん」


手を握られて、足早に立ち去る。


アベルくんのスペイン料理屋さんに着いても、無言のまま。


でも手だけはしっかりと握ってる。