「ああ、お父さん。おはよう、今朝、優斗の霊力がついに目覚めたんだよ」

 学校に行く優斗を見送り、昨日あった出来事をさっそく旦那に報告した。隣県に単身赴任しながら忙しく仕事をしていることを知っているので、普段は滅多に連絡をしなかった。けれど実の息子のことなので早く教えてあげるべく、報告の電話をしてあげた。

『やぁ、それはめでたいね。お祝いしなきゃだな。詳しく話を聞きたいから、今夜は帰るよ』

「じゃあ、お赤飯を炊いて待ってる。ビールも冷やしておかなきゃね」

 ウキウキしながら言うと、クスクス笑われてしまった。

『君の息子だからきっと、ちょえーとか言って、カッコよく除霊するんだろうな』

(ちょえーなんて、一度も言った覚えはないのに……)

「残念ながら誰に似たのか分からないけど、あのコは臆病だからね。苦労すると思うわ」

 見た目はお父さんに似てカッコイイだけに、えらく残念だったりする。

『大丈夫だ、僕たちの息子を信じてあげよう。君が僕を支えてくれたように、同じようにしてあげるんだろう?』

 どちらかといえば、私がお父さんに支えられていた。そう思っているんだけどね。

『今夜は仕事を早く終わらせて帰るから、じゃあ』

「あ、うん。美味しい物をたくさん作って待ってるね」

 弾んだ声で返事をした後に電話が切られた。

「あのときの出逢いから、もうすぐ20年になるのか。時の流れは早いもんだねぇ」

 まさか、依頼人と結婚するなんて思ってもいなかった。独身の頃の私、:衣笠葵(きぬがさ あおい)

 幽霊のお導きで:三神勇人(みかみ はやと)さんと出逢った。