背の高いスリムな体型で長い髪をかきあげながらご紹介するマンションに現れたのは女性だった。
お客様が女性とは思わなかった。
お客様まで女の人を選んでるんじゃないでしょうね。と加賀さんに言ってやりたい。
「堅苦しいことは嫌いよ。
早く始めてちょうだい。」
厳しい視線を加賀さんに送り、マンションの構造に一棟の部屋数、間取りなどを話し始めた。
私はといえばハーブティが好きなお客様にポットとカップを営業車から出して、別の部屋で準備する。
ガスも水道も下水も使えない。
そこでわざわざハーブティなのだからどれだけ重要な顧客かが伺える。
岩城聡子。
53歳。
バツイチ子持ち。
複数経営するやり手女性社長。
53歳には見えない。
美魔女という言葉が相応しい。
………加賀さんは岩城様のような方のことを言ってるのかしら。
数人知っているという魔女のことは。
フッと息を漏らして頭を振った。
加賀さんの軽口を本気にするなんてどうかしてる。
いくつかある茶葉からカモミールティを選んで淹れた。
ガラスのポットの中で踊る茶葉がなんとも癒される。
この光景も見て頂きたいけれど加賀さんとの討論みたいな会話を邪魔してはいけないだろう。
3分ほど蒸らしてティーカップに注いだ。
「失礼します。」
静かに。けれど白熱していた話し声は私の声とノックで止まった。
「入って。」
「はい。」
部屋に入ると初めて私の方に顔を向けた岩城様が顔をほころばせた。
「カモミールね。いい香り。
加賀くん。一旦、休憩にしましょ。」
「はい。」
柔らかな営業スマイルを向けた加賀さんは確かに自分の見た目を武器にしている。
酒井様にはあんな顔をしなかった。
きっと使い分けているんだ。
誰にどんな表情が有効か。
「加賀くんには悪いんだけど屋根裏があるって言ってたじゃない?
そこって見られるのかしら。」
「屋根裏……ですか。
はい。確か鍵があったと思います。」
「見てみたいわ。でも上るのも嫌ね。
適当に写真でも撮ってきてくれない?」
「えぇ。承知しました。」
「僭越ながら私が……。」
名乗り出てはみたもののお呼びではなかったようだ。
「いいのよ。ここは男性に任せましょ。
上司だからって男は使えばいいのよ。」
ウィンクした岩城様に「では、そのように」と微笑んだ加賀さんは一礼した。
颯爽と出て行く加賀さんを不安な気持ちで見送った。
「加賀くんは口をつけちゃったかしら。
私より先にはつけない男よね。
これはあなたが飲んで。
お茶に付き合ってよ。」
「はい。」
何を話せばいいのか。
とりあえずは不安な気持ちも何もかもを見せないように岩城様の隣に座った。
お客様が女性とは思わなかった。
お客様まで女の人を選んでるんじゃないでしょうね。と加賀さんに言ってやりたい。
「堅苦しいことは嫌いよ。
早く始めてちょうだい。」
厳しい視線を加賀さんに送り、マンションの構造に一棟の部屋数、間取りなどを話し始めた。
私はといえばハーブティが好きなお客様にポットとカップを営業車から出して、別の部屋で準備する。
ガスも水道も下水も使えない。
そこでわざわざハーブティなのだからどれだけ重要な顧客かが伺える。
岩城聡子。
53歳。
バツイチ子持ち。
複数経営するやり手女性社長。
53歳には見えない。
美魔女という言葉が相応しい。
………加賀さんは岩城様のような方のことを言ってるのかしら。
数人知っているという魔女のことは。
フッと息を漏らして頭を振った。
加賀さんの軽口を本気にするなんてどうかしてる。
いくつかある茶葉からカモミールティを選んで淹れた。
ガラスのポットの中で踊る茶葉がなんとも癒される。
この光景も見て頂きたいけれど加賀さんとの討論みたいな会話を邪魔してはいけないだろう。
3分ほど蒸らしてティーカップに注いだ。
「失礼します。」
静かに。けれど白熱していた話し声は私の声とノックで止まった。
「入って。」
「はい。」
部屋に入ると初めて私の方に顔を向けた岩城様が顔をほころばせた。
「カモミールね。いい香り。
加賀くん。一旦、休憩にしましょ。」
「はい。」
柔らかな営業スマイルを向けた加賀さんは確かに自分の見た目を武器にしている。
酒井様にはあんな顔をしなかった。
きっと使い分けているんだ。
誰にどんな表情が有効か。
「加賀くんには悪いんだけど屋根裏があるって言ってたじゃない?
そこって見られるのかしら。」
「屋根裏……ですか。
はい。確か鍵があったと思います。」
「見てみたいわ。でも上るのも嫌ね。
適当に写真でも撮ってきてくれない?」
「えぇ。承知しました。」
「僭越ながら私が……。」
名乗り出てはみたもののお呼びではなかったようだ。
「いいのよ。ここは男性に任せましょ。
上司だからって男は使えばいいのよ。」
ウィンクした岩城様に「では、そのように」と微笑んだ加賀さんは一礼した。
颯爽と出て行く加賀さんを不安な気持ちで見送った。
「加賀くんは口をつけちゃったかしら。
私より先にはつけない男よね。
これはあなたが飲んで。
お茶に付き合ってよ。」
「はい。」
何を話せばいいのか。
とりあえずは不安な気持ちも何もかもを見せないように岩城様の隣に座った。