もう何日もまともに加賀さんと話していない。

 話すとしたら事務的な話で、あんなにも話していたのは、全て加賀さんからアクションを起こしてくれていたんだと、今さらながらに気付かされた。

 それでも……。
 加賀さんに話さなければ。

 私は意を決して、席を立った加賀さんの後を追って声を掛けた。

 その姿をみんなが心配そうに見ていたことを私は知らなかった。

「加賀さん!あの。ご相談が。」

 目を合わせてくれない加賀さんに酒井様の状況をお伝えした。
 仕事が忙しくてあまりご主人に会えていない、あの寂しそうな奥様の横顔が目に焼き付いて離れない。

「加賀さんからそれとなく言ってみてくれませんか?
 気丈に振舞ってらっしるのですが、もう辛そうで辛そうで。
 見ているこちらも辛くなるんです。」

 必死に訴える私と久しぶりに視線が絡まった加賀さんはまた視線を逸らしてしまった。

「分かった。話してみる。南も教えてくれてありがとな」とだけ言って去っていった。

 寂しさが全身に込み上げて泣いてしまいたかった。