けれど隼人さんは納得できないみたいだった。

「そんな……。
 営業に行く前にこんなこと言うのは違うかもしれないけど………。」

 まだ何かあるのかな。
 私を心配して言ってくれてはいるんだろうけど。

 そんな私の予想に反して隼人さんは驚くべきことを口にした。

「僕、南ちゃんのこと好きだから。」

「………はい?」

 思いっきり疑問形で聞き返すと、うなだれた隼人さんが御託を並べ始めた。

「そりゃ加賀さんより背は低いし、加賀さんの方が男前だし、加賀さんは営業成績もいいしさ。大人だしね。
 前のコンビニの時だって俺はあんな風に切り返せないけど………。」

「なんだ。
 隼人さんが好きなのは加賀さんなんですね。」

「は?
 まだあのコンビニのアレ引っ張るの?」

 眉をひそめた隼人さんに笑う。

「いいえ。
 だって今さっき言ったことは全部、加賀さんに憧れてますって言ってるみたいで。」

「いや、そんなことは………アレ……え?」

 隼人さんは自分で気づいていなかったのかな。
 そう思うとおかしかった。

「そんなことないよ。俺、本気だから。
 俺のことも考えてよ!」

 再び真剣な顔をした隼人さんが迫ってきて、思わず身構えた。
 顔の前を腕で塞いで、これ以上近づけないように………。

 ………あれ?
 加賀さんにはこんな反応、出たことがない。

 自分の無意識な行動に嘲笑した。

「加賀さんしかダメなのかよ。」

 そうこぼした隼人さんは諦めたように体を離して車のエンジンをかけた。