「噂は噂。とは思ってたわ。
 けれどトラブルはごめんだとも思ってたの。
 そんなの噂をしてる子達と変わらないのにね。」

「そんなこと!そんなことないです。」

 そんな根も葉もない噂を立てられるのは学生時代から日常茶飯事で慣れていた。
 噂を聞いて冷たくされるのも。

 けれど美智さんたちは嫌々でも受け入れてくれて、私がどんな人物か分からない間もひどい対応をしないでいてくれた。

 何より、今、こんなによくしてくれている。

「で、懺悔をしたいから言ってるわけじゃなくてね。
 南ちゃんをメンバーに入れる!って言い出したのは加賀さんで、乗り気じゃないみんなを説得したのも加賀さんなのよ。」

 そこまでしてくれていたなんて……。
 目頭が熱くなって鼻の奥がツンとした。

「南ちゃん。加賀さんのこと好きでしょ。」

 急な指摘に涙は驚いて引っ込んでしまう。
 最近、こんなことばっかりだ。

「そ、それは……。」

「いいの。分かってるんだから。
 滅茶苦茶な人よ。
 でもね。南ちゃんも分かると思うけど南ちゃんをメンバーに入れようって言うような人なの。
 そこは信じていいと思う。」

 美智さんが何を言いたいのか。
 なんとなく分かる気がした。

「あの……どうして私をメンバーに入れようと思ったのかって知ってますか?」

 知ってどうするのか。
 また、美人だったからとか、どうしようもない理由かもしれない。

 苦笑した美智さんに聞かなきゃ良かったかなって後悔が押し寄せた。

「目だって。」

「目……ですか。」

「えぇ。なんでも南ちゃんの異動話が出た時にたまたま話す機会があったらしくて。」

 あの平手打ちの時………。

「南ちゃんの目が信頼できる目だったそうよ。
 野生の勘だもの。嫌になっちゃう。」

 ふふっと笑う美智さんはその野生の勘とやらを信じてくれた1人だ。

「私達も目を見て残留を決めたって言われたら信じないわけにいかないじゃない?
 結果、信じて良かったわ。」

 美智さんがベッドから手を出して差し出した。

「改めてよろしくね。」

「……はいっ!」

 握手をしてお互いに笑い合った。