「あからさまにガッカリされると俺も傷つくな。」

「え?」

 ニコニコ笑う武蔵さんと目が合って慌てて否定する。

「そんな。ガッカリだなんて。」

「ハハッ。嘘、嘘。
 いいんだよ。気になってるんだろ?
 雅也のこと。」

 キニナッテイル。

 言葉にすると急に恥ずかしくなって首を横に振った。

「そんなんじゃないんです。」

「まぁそういうことにしとこうかな。」

 2人しかいない営業車の中で逃げ場がないのは困ったことだった。
 加賀さんと行った営業でそう思わなかったのは、加賀さんが気を遣ってくれていたのかもしれない。

 武蔵さんは理由は言わずに加賀さんのことを話し始めた。

「雅也の女関係が最悪なのは知ってるよね?」

「え、えぇ。」

「さすがに俺も心配になるよ。
 いつか刺されるぞ。って忠告したことがあるんだ。」

 正しい忠告だ。
 刺されても文句言えないクズさ。

 武蔵さんは加賀さんがその忠告になんて答えたかを教えてくれた。

「そしたら「刺されたって構わない。それで死ねるなら俺は刺されたい」って。」

「何を……言って………。」

 言葉を失って武蔵さんを見れば武蔵さんはつらそうに顔を歪めた。
 何かに怒っているように。

「俺はそんなことを言う雅也に何も言えなかった。」

「どうして………。」

「……うん。雅也の背負っている色々が、俺に仕方ないって思わせるんだ。
 刺されて死んだら、俺は友人としてちゃんと弔ってやろうって。」

「何を言って……。」

「狂ってるよね。
 けど、あいつはそのくらい厄介なんだ。
 南ちゃんはさ。いい子だから。
 雅也の側に居て欲しいと思う反面、居て欲しくないとも思う。」

 ごめん。意味不明だよね。
 そう言って笑う武蔵さんを問いただせなかった。

 あまりにも悲しそうでつらそうで。

 数日間の加賀さんしか知らない私が意見していいことではない気がした。