「可愛いネックレス。
 もしかして恋人から?」

 いち早く美智さんが気づいて指摘した。

 加賀さんが席を外していて良かった。
 何を言われるか分かったもんじゃない。

「違いますよ。」

「そうなの?
 私もそこのブランド好きよ。
 でも高くて。
 自分でご褒美って思ってもなかなか買えないのよね。」

 そうなのだ。
 見た目の可愛さとは裏腹に目が飛び出るほど高い。

 もらって……良かったのかな。
 外して来なかったのは、キスを気にしてると思われるのが嫌で何度も考えた結果の苦肉の策。

 気にせず身につける。
 これしか思いつかなかった。

「そういえば知ってる?
 加賀さんの異名。」

「異名……ですか。」

 思いつくのは、女たらし、 平手打ち男、最低野郎に、クズ男……まだまだたくさんありそうだ。

「ま、有名人だからね。
 黙ってるだけで目立つし。」

 私からしてみれば黙っていればいいのに。
 そう思うことの方が多い。

 美智さんはもったいぶってから続けた。

「加賀雅也。ノーブランドの男。」

「ノーブランド……。」

 その言葉で思い出すのは傷だらけの時計。
 言われてみれば他の物でも有名ブランドを身につけているイメージは無い。

「加賀さんほどの人なら嫌味なくらいブランドの服にベルトにって人も多いのに、そんなことないのよね。」

 ノーブランド………。
 じゃ、このネックレスは……。

 疑問に思っているとますます謎を深めることを美智さんが言った。

「女の人へもブランドのプレゼントを贈ったりしないみたいよ。」

 え…………。
 それってどういう………。

「って、いうより何もプレゼントしないのに女が寄ってくる。が、正解だろ。」

 武蔵さんの助言に2人で納得した。

 でも、それじゃどうして……。

 意味なんてない。
 分かっているはずなのに意味を探してしまう自分に自嘲した。