「加賀さん。今日は………。
 ヤダ!ごめんなさい!!」

 半裸の加賀さんがタオルで体を拭いていて、開けかけたカーテンを急いで閉めた。

 細過ぎず無駄のないしなやかな筋肉、そして咥えていたゼリー飲料が何故かとてもいやらしく見えたのは本人のポテンシャルの高さ?
 それとも彼の日頃の行いのせい?

 未だに目がチカチカして頭を振る。

「ヤダなぁ。そんなに見たかったのか?」

 口の端を上げて笑う加賀さんがカーテンを開け、そちらが見られずに背を向けた。

「すみません!!
 看護婦さんがちょっと出てくるからと居なかったので、着替えてるなんて知らなくて。」

「もう着たからそっち向いてないで大丈夫だぞ。」

 そう言って着てないってことをしそうな人だから信用ならないの!

「で、今日はなんだって?」

「あ、えぇ。
 武蔵さんからもう今日は帰れとのお達しです。」

「ったく大丈夫なのによ。
 すっかり寝ちまったわ。」

 大きなあくびをしている声を聞いて、おずおずと振り返った。
 ワイシャツを着て袖のボタンを留めているところだったのを見て、ホッと息をつく。

 振り返った私に気づいてこちらを見た加賀さんが腕を出した。

「留めてくれる?」

「いつも冗談が過ぎます。」

「ハハッ。活用も出来るのな。」

 どうせ『ご冗談を』と言って欲しかったんでしょうね。

 楽しそうな加賀さんを観察する。
 さっきよりは顔色が良さそうだ。

「ちゃんと寝てますか?
 休息を取らなきゃダメですよ。」

「んー。寝かせてくれない相手がたくさんいるからな。」

「………聞いた私が馬鹿でした。」

 こんな人を心配したことすら馬鹿馬鹿しくなって事務的に伝えた。

「とにかく今日は帰ってください。
 荷物はこれで良かったですか?
 では、私はこれで。」

「あぁ。サンキュ。」