「名前は?」
「申し遅れました。南です。
よろしくお願い致します。」
名刺も何もない。
格好つかないけれど仕方がない。
「加賀くんの恋人?」
「まさか!」
フフフッ。と笑う岩城様はお茶目な顔をしてこう言った。
「こっちがお断りって感じね。面白いわ。
あの、加賀くんを。」
あの、加賀さんだからです。
とは言わなくても分かっているだろうな。
楽しい雰囲気にホッと胸を撫で下ろす。
「野々村さんは?」
………野々村さん。
「前任の野々村さん。
普通は引き継ぎがあるはずよね。」
変わらない柔らかな雰囲気の中に冷たくて手厳しい何かを感じた。
それは罠に掛かったウサギのような気分だった。
そもそも、前は野々村さんが加賀さんのアシスタントだった、それすら知らなかった。
優雅にカモミールティを飲まれる岩城様に合わせて自分も一口頂いた。
リラックス効果がある。……はず。
味なんて感じる余裕はない。
どうする。
どう答える。
どう切り抜ける。
一口飲んだのに喉はカラカラに乾いて心を鎮めるように細く息を吐いた。
「申し遅れました。南です。
よろしくお願い致します。」
名刺も何もない。
格好つかないけれど仕方がない。
「加賀くんの恋人?」
「まさか!」
フフフッ。と笑う岩城様はお茶目な顔をしてこう言った。
「こっちがお断りって感じね。面白いわ。
あの、加賀くんを。」
あの、加賀さんだからです。
とは言わなくても分かっているだろうな。
楽しい雰囲気にホッと胸を撫で下ろす。
「野々村さんは?」
………野々村さん。
「前任の野々村さん。
普通は引き継ぎがあるはずよね。」
変わらない柔らかな雰囲気の中に冷たくて手厳しい何かを感じた。
それは罠に掛かったウサギのような気分だった。
そもそも、前は野々村さんが加賀さんのアシスタントだった、それすら知らなかった。
優雅にカモミールティを飲まれる岩城様に合わせて自分も一口頂いた。
リラックス効果がある。……はず。
味なんて感じる余裕はない。
どうする。
どう答える。
どう切り抜ける。
一口飲んだのに喉はカラカラに乾いて心を鎮めるように細く息を吐いた。

