「何から話せばいいんだろうねぇ…?」




「初めてこのお店に来た時からお願いします!」




「そうねぇ、美羽ちゃんが初めて来たのはまだ美羽ちゃんが幼稚園に通っていた頃だったかしら」




「そんな小さい頃…」




「お父さんと一緒に来て、その日お父さんはパソコンでなにかお仕事?をしてたかしらねえ、お父さんはコーヒーを頼んで、美羽ちゃんは今日出したようにお父さんがなにか飲み物とスコーンを頼んでたわ」




「その時もスコーン食べてたんですか?」




「ええ…そうよ、レーズンが入ったスコーンと普通のスコーンを食べてたわ」




「そうだったんだ……」




「美味しそうにスコーンを食べててあの頃の私の楽しみでもあったわ」




「それからはスコーンが気に入ったのか毎日来るようになって、お父さんも幸せそうだったわね」




「そうだったんですね…、でも実は…私の両親離婚してお父さんはもう再婚してるらしいんです」




「美羽ちゃんのお父さんなら最近もたまに来るわよ?」




「えっ?そうなんですか??」




「それに今は結婚してないって聞いてるけど…」




「それってまた離婚したってことですか?」




「わからないわ、でも美羽ちゃんの事良く聞いてたからまだ、心配してるみたいよ」




「なんで今更……」




「美羽、泣いてんの?」




「え……?泣いてなんか…」




手で顔を触ると本当に泣いていたようだ。




自分でも気づかなかった。




樋口くんがわざわざ隣に来てくれて、涙を手でそっとふいてくれた。




「大丈夫、落ち着け?俺がいるから」




「うぅ……」




泣き止むまでそのまま抱きしめてくれた。




「ごめんなさいね、泣くとは思わなくていろんなこと話しちゃって」




「いえ、こちらこそわざわざ話してくれているのに取り乱してしまって…申し訳ないです」




「また、聞きに来てちょうだい」




「わかりました」




「今日は帰るか?」




「うん……でも、もう少し隣にいさせて…」




とてもじゃないけど勉強できるような雰囲気じゃなかった。それに、私の集中力も一切ないと思う。




樋口くんが頭を撫でてくれた。




「大丈夫だからな、無理すんな」




あー……こんな時までキュンってしちゃう私はなんだろうな…。自分が泣いてるせいか、いつもより樋口くんがかっこよく見えるよ。




「はあ…」




「落ち着いたか?」




「うん、ありがとう…」




「私ね、お父さんとの思い出そんなに覚えてなくて…」




「そっか、それで泣いちゃったのか」




「多分…そうなんだと思う、覚えてないけど、この喫茶店も入った時すごい見たことあるっていうか懐かしい感じがして…」




「すごい偶然だよな、昔美羽が来てた店に俺が来てたなんて」




「ほんと偶然…、おかげて昔のこと少し知れたよ、ありがとう」




「いいよ」